パワー・トリオに立ち返り、ハード路線に舵を切った1978年のロリー・ギャラガー。原点回帰の生演奏を脳みそに直接注ぎ込むサウンドボード・アルバムが登場です。そんな本作に封じられているのは「1978年11月20日クリーヴランド公演」。そのステレオ・サウンドボード録音です。1978年と言えば、キーボード入りの4人編成からトリオへの転換期。良い機会でもありますので、まずは当時のスケジュールを振り返り、ターニングポイントと本作の位置関係を俯瞰してみましょう。・3月27日ー4月29日:欧州#1(20公演)《ルー・マーティン/ロッド・ディアス離脱→テッド・マッケンナ加入》・6月1日ー7月2日:欧州#2(4公演)《7月ー8月『PHOTO-FINISH』製作》・8月18日ー9月30日:欧州#3a(15公演)《10月1日『PHOTO-FINISH』発売》・10月1日ー10月30日:欧州#3b(25公演)・11月8日ー12月4日:北米(29公演)←★ココ★・12月8日ー31日:欧州#4a(14公演)これが1978年のロリー・ギャラガー。資料によって矛盾もあるので公演数などの細部は確実とは言えませんが、おおよその流れはご理解頂けると思います。一度は4人編成でアルバムを完成させたものの廃棄し、後にMSGにも加入する故テッド・マッケンナとパワー・トリオを編成。名作『PHOTO-FINISH』を制作します。ツアーは大票田の欧州がメインではありますが、本作のクリーヴランド公演は合間を縫うように行われた「北米」レッグの一幕でした。この「北米」レッグはサウンドボードの名産地でもあり、『BOTTOM FINISH』『BOTTOM LINE 1978』『BOTTOM LINE 1978 LATE SHOW』でもお馴染み。その辺の位置関係を理解するため、ここで「北米」レッグにフォーカスしてみましょう。「北米」レッグの詳細・11月8日ー10日(4公演)・11月11日『BOTTOM LINE 1978(アーリー)』・11月11日『BOTTOM LINE 1978 LATE SHOW』・11月12日:ニューヨーク公演(アーリー)・11月12日『BOTTOM FINISH(レイト)』・11月13日ー19日(7公演)・11月20日:クリーヴランド公演 ←★本作★・11月21日ー12月4日(13公演)……と、このようになっています。サウンドボード3連作はどれも今は亡きニューヨークの名クラブ“ボトムライン”で記録されましたが、本作はその翌週でした。そんなショウを真空パックした本作は、最近になって発掘された大元マスターリールからデジタル化された銘品で、ボトムライン三部作にも負けない絶品サウンドボード。ボトムライン三部作ほどの極太感はありませんが、その代わりアンサンブル全体のバランスが美しい。そして何よりマスター・リール起こしだからこその鮮度。ヨレや歪みがまるでなく、芯もディテールも瑞々しい。ミックス卓直結系のダイレクト感とアンサンブルの整ったバランス感覚を両立したサウンドボードなのです。その均整サウンドで画かれるのは、ボトムライン三部作とも異なる灼熱のステージ。いかにも1978年らしく名曲「Shin Kicker」で幕を開けますが、それ以降は意外と違う。ここで比較しながら整理してみましょう。オリジナル(10曲)・フォト・フィニッシュ:Shin Kicker/Shadow Play/The Mississippi Sheiks/Cruise On Out(★)・その他:Do You Read Me/Bought And Sold/Secret Agent/A Million Miles Away/Tattoo'd Lady/I Could've Had Religion(★)カバー(4曲)・Bullfrog Blues(トラッド)/Messin' With The Kid(ジュニア・ウェルズ)/I Wonder Who(マディ・ウォーターズ)/I Take What I Want(★:サム&デイヴ)※注:「★」印はサウンドボード3連作『BOTTOM FINISH』『BOTTOM LINE 1978』『BOTTOM LINE 1978 LATE SHOW』のどれでも聴けなかった曲。三部作のどれでも聴けなかったのは3曲。特に「Cruise On Out」は貴重ですし、サム&デイヴの「I Take What I Want」もその後のツアーでは演奏していない美味しい1曲です。それ以外にも「Bought And Sold」「I Wonder Who」「Tattoo'd Lady」「The Mississippi Sheiks」辺りが日替わり曲。ボトムライン三部作を体験された方でも新鮮なライヴアルバムなのです。ロリー流のブルースロックを堅持しつつ、ハードロック・ファンにも愛された『PHOTO-FINISH』時代。そのステージが脳内に再現されるサウンドボードルバムの新名盤です。ボトムライン三部作を愛されてきたコレクター諸兄はもちろん、1978年初体験の方にもお薦めの逸品。「1978年11月20日クリーヴランド公演」のステレオ・サウンドボード録音。最近になって発掘された大元マスターリールからデジタル化された銘品で、アンサンブル全体のバランスも素晴らしく、ミックス卓直結系のダイレクト感と両立。名作SBD『BOTTOM FINISH』『BOTTOM LINE 1978』『BOTTOM LINE 1978 LATE SHOW』で聴けない「Cruise On Out」「I Could've Had Religion」「I Take What I Want」も美味しい新名盤です。The Agora Theater, Cleveland, Ohio, USA 20th November 1978 STEREO SBD Disc 1(60:55) 1 Shin Kicker 2 Do You Read Me 3 Bought and Sold 4 I Wonder Who 5 Shadow Play 6 Secret Agent 7 Mississippi Sheiks 8 A Million Miles Away 9 Tatoo'd Lady Disc 2 1. Cruise On Out 2. I could have had Religion 3. Bullfrog Blues 4. Messing With The Kid 5. I Take What I Want Rory Gallagher - Guitar, Vocals Gerry McAvoy - bass Ted McKenna - drums STEREO SOUNDBOARD RECORDING