マニアを熱狂の渦に陥れたペイジ・プラント武道館公演の最終日は後にサウンドボード録音が流出。現在ではそちらの方で慣れ親しんでいるマニアの方が多いかもしれません。それどころか、この日のオーディエンス録音を聞いたことがないというマニアも今では少なくないのでは。ところが『10 DAYS』マスターの偉大なところは、サウンドボードを持ってしてもなお、その価値が色褪せていない見事な録音状態であるということ。実際その音像は非常にオンなバランスであり、曲によってはジミーのギターがそれこそサウンドボードか?と錯覚しそうになるほど近い個所まである。例えば珍しくライブ終盤で演奏された「What Is and What Should Never Be」のエンディングはジミーのギターが会場に置かれたスピーカーの左右に振り分けられて音が大きくなったり小さくなったりしますが、これもサウンドボードとは違うオーディエンスならではの感触。それに何と言っても『10 DAYS』マスターならではのきめ細やかな臨場感もサウンドボードでは味わえない大きな魅力でしょう。連日マナーの良い日本のオーディエンスを前にバンドは大胆なセットリストの変革を続けられた訳ですが、この日もまた近くで騒ぐ輩などいっさいおらず、そのきめ細やかな臨場感を彩ってくれ、それでいて抜群の聞き心地には驚かされるばかり。それにライブの内容自体が武道館行程の最後を締めくくるに相応しい充実の極み。何と言ってもオープニングが衝撃の「Thank You」。ZEP時代には73年のようにツアー最終日の最後に文字通りの感謝を込めて演奏されていた訳ですが、それを武道館の最終日に限ってオープニングで演奏してくれたというのが粋な計らいすぎる。おまけにイントロからしてジミーのギターが非常に近く、ここだけ取ってもサウンドボードにひけを取らない絶品オーディエンスであることを実感してもらえるはず。そんな感動を呼び起こすオープニングから一転しての「Custard Pie」。これも前日は終盤に演奏されていたというのに、ここでは二曲目で早くも登場という展開がその場に居合わせたマニアを驚かせたもので、そこから「Black Dog」という展開もまた意外かつ非常にインパクトのあるものでした。こうなるとバンドは緩急自在、どんなレパートリーでもオッケーよと言わんばかりのエンジン全開ぶり。これらハードでアゲアゲなナンバーから一転して披露されたのは何とジミーとロバート二人だけの「Tangerine」。正に究極のギャップ萌えがマニアを打ちのめしたであろうと同時に、ここでもそれまでの日本公演の経験を活かしてライブ序盤にして静かでアコースティックな曲を披露する展開が成功。さらに「Going To California」に「Babe I’m Gonna Leave You」といった日本だからこそ映えるレパートリーが披露されたのもこれまでの経験を活かした展開となっていますが、その極めつけが「Friends」。そう、この日は「Tangerine」と同曲が一緒に披露されたことで、武道館に居ながら疑似929体験ができたというマニア感涙の一日でもあった。実際「Friends」の演奏は見事の一言。武道館最終日ならではの素晴らしい瞬間も『10 DAYS』マスターならではの再現力が冴え渡っており、これ一曲とっても本オーディエンス録音を聞く価値は十分にある。一方フィナーレ「Rock And Roll」はロバートが歌うタイミングを間違えたのをきっかけにグタグタな終わり方となってしまったのですが、これも今となってはご愛敬。この日のステージ全体の演奏の素晴らしさからすると微塵なことでしかない。やはり武道館日程の最後を締めくくりに相応しい名演であったことは間違いなく、何よりこの日のサウンドボードを聞きなれた方でも絶対に満足できるほどの新鮮なオーディエンス体験を『10 DAYS』マスターが保証します!Budokan, Tokyo, Japan 13th February 1996 ULTIMATE SOUND(from Original Masters)*UPGRADE Disc 1 (61:40) 1. Intro. 2. Thank You 3. Custard Pie 4. Black Dog 5. Tangerine 6. Hurdy-Gurdy Solo 7. Gallows Pole 8. Tea for One 9. Band Introductions 10. The Song Remains the Same 11. Going to California 12. Babe, I'm Gonna Leave You Disc 2 (64:29) 1. Whole Lotta Love 2. Friends 3. The Truth Explodes (Yallah) 4. Four Sticks 5. Kashmir 6. What Is and What Should Never Be 7. Rock and Roll