ローリング・ストーンズが1975年のマディソン・スクエア・ガーデンで敢行した連続公演の千秋楽ではカルロス・サンタナがフィナーレ「Sympathy For The Devil」に飛び入りした伝説の一夜となりました。その模様を捉えたオーディエンス録音は二種類存在します。「recorder 1」LP『HOLD ON TIGHT』で日の目を見た音源「recorder 2」LP『PRESERVE FOR FUTURE』と『DISCOVER NEW YORK』で日の目を見た音源 最初にリリースされたのは『HOLD ON TIGHT』の方で、LP三枚に収めるべくピッチを高め、なおかつ曲順を変えていたのが大きな欠点でした。その点「recorder 2」を使った二枚のLPはずっと聞きやすい状態で収録されていたものの、今度はライブ終盤のリリースが叶わずに終わってしまったという。しかしCD時代を迎えると「recorder 2」を収録した二タイトルのCD化によって一気に普及。さらには別の編集盤に収められていたアンコール「Sympathy For The Devil」も一つのタイトルの下でまとめられた新たなVGP盤が出されましたが、タイトルとアートワークは『HOLD ON TIGHT』というスタイルでリリースされたのでした。こうした状況によりCDでは「recorder 2」の天下がずっと続いていたのですが、それ以前からマニアの間では「音質は「recorder 1」の方が秀でている」というのが常識でした。確かに「recorder 2」も非常に良好な音質であったのですが、録音者の近くでしつこく「Satisfaction」を叫ぶ女性の声が耳障りであった。その点「recorder 1」の方が音像は圧倒的に近く、マニアの研究書においても『HOLD ON TIGHT』LPが「正確な曲順と正確なピッチなら後世に残る名盤だったのに…」と言わしめるほどでしたし、ファンクラブ会報に至っては「サウンドボードである」と明言したほど。そもそも『HOLD ON TIGHT』をリリースしたレーベルは独自のジャケット・センスとマニアックなオーディエンス録音タイトルがメインだったことで、当時は正当な評価が得られませんでした。サウンドボードの『PHILADELPHIA SPECIAL』や『HOT AUGUST NIGHT』が大旋風を巻き起こしていた時代ゆえ、むしろ浮いてしまった感すらあったのです。しかし、この『HOLD ON TIGHT』、さらにバトン・ルージュの『CAJUN QUEEN'S AFTERNOON DELIGHT』そして72年ツアー・サウンドボードの集大成『PLUG IN FLASH OUT』は独特のアートワークと相まってこのレーベルが生み出した三大名盤と呼べるかと。こうなると「recorder 1」のCD盤の登場は急務だった訳ですが、「recorder 2」の天下が長すぎてなかなか登場しない。マニアの留飲が下がったのは2008年のこと。まず『THE ORIGINAL HOLD ON TIGHT』がLPからの見事なCD化を実現。当時マニアを大いに喜ばせた一方で「Gimme Shelter」の途中で生じるマイクノイズを隠蔽する編集や二枚のCDに収めるべく曲間をつまむなど、元の状態に忠実とは言えない点があったのは確か。その点DAC盤『HOLD ON TIGHT』は無用な編集のない状態で収録されているというメリットがあった一方、音質が元のLPから大きく変化しているという問題を抱えていた。それはそれで完成度の高い仕上がりだったのですが、LPのウォーミーな音を聞いてきたマニアからすれば違和感を覚えたのも事実。このように、何かしら問題を抱えていた『HOLD ON TIGHT』復刻タイトルのリリースからも15年の歳月が経過。再び「recorder 1」が入手困難な状況へと陥ってしまったのです。この由々しき事態に立ち上がってくれたのが「Graf Zeppelin」。改めて最新技術を駆使したLPからのCD化を敢行。音質がかなり変わっていたDAC盤はもとより、『THE ORIGINAL HOLD ON TIGHT』と比べてもさらに忠実にオリジナルLPならではの聞きやすさを忠実に、しかもノイズレスでCDに封じ込めています。それだけでも過去の二タイトルを大きく引き離す仕上がりを見せているのですが、さらに「Graf Zeppelin」は随所で見られた微妙な音揺れなどもきっちりアジャスト。そしてピッチに関しても全体を通しての正確さを徹底。これもまた過去のアイテムを寄せ付けない見事な完成度を誇ります。もちろん欠損個所は「recorder 2」で補填しましたが、それもまたスムースの極み。代わりにオリジナルのLPで混入されていた「Rip This Joint」24日のテイクは削除することなく最後にボーナス扱いとして収める念の入れよう。そんな音像の迫力を誇る「recorder 1」を安定した状態で楽しめるのは格別。この音像でMSG最終日らしいワイルドな演奏ぶり、かと思えば「Midnight Rambler」でちょっとスイッチが切れるミック、果てはキースがベースを弾いてしまったことで正に暴走列車のように始まってサンタナが加わるフィナーレ「Sympathy For The Devil」といったこの日ならでのはちゃめちゃなステージを心ゆくまでお楽しみください。これぞ2023年に相応しい、ベストの『HOLD ON TIGHT』です。リマスター・メモ アナログLP "HOLD ON TIGHT" (CS-MSG-75)をベースに、欠落部を別ソースで補填し、疑似ながら初の全曲ノンストップ完全収録を実現 過去にも同様の手法の既発盤がありますが、そちらでは曲間の編集が甘く、欠落や編集ミス、フェイク処理などもあり、本盤が初のノンストップ完全盤となる 音も本盤ではアナログ盤の広がりのあるサウンドを尊重*既発盤では演奏をセンターに寄せるためなのか、若干(30%くらい)モノラル寄りの処理がなされている スクラッチノイズは、ピンポイントで丁寧に根気よく除去。 ソフト上で、波形全体を一括選択で一気にノイズ処理するような(=人工的にな音になる)処理はしてません。また、元音源の時点で左チャンネルのヒスが気になる箇所が多々ありますが、必要最小限の処理に留めてます。ピッチは一定ではなかったため、可変で適宜補正。また一部ですが、テープの震え(ワウフラ)も補正してます。Angieのトライアングル(?)等々 ボーナスのRip This Jointはアナログ盤に収録されていた24日のもの。ピッチ修正のうえ収録。Madison Square Garden, New York City, NY, USA 27th June 1975 PERFECT SOUND(UPGRADE)Taken from the 3LP "HOLD ON TIGHT" (CS-MSG-75) Disc 1 (52:50) 1. Fanfare For The Common Man 2. Honky Tonk Women 3. All Down The Line 4. If You Can't Rock Me - Get Off Of My Cloud 5. Star Star ★4:13-4:22(演奏後曲間) 補填 6. Gimme Shelter ★5:40-5:41(音切れ部) / 6:25-6:58(演奏後曲間) 補填 7. Ain't Too Proud To Beg 8. You Gotta Move ★4:05以降 補填 9. You Can't Always Get What You Want ★0:00-0:02 / 6:58-8:35 /12:21-12:31(演奏後曲間) 補填 Disc 2 (53:25) 1. Happy 2. Tumbling Dice 3. It's Only Rock'n Roll ★5:27-5:34 補填 4. Band Introductions 5. Doo Doo Doo Doo Doo (Heartbreaker) 6. Fingerprint File 7. Cherry Oh Baby ★6:07以降 補填 8. Angie ★0:00-0:08 補填 9. Wild Horses ★6:51以降(演奏後曲間) 補填 Disc 3 (55:15) 1. That's Life ★丸ごと別ソース 2. Outa Space ★0:00-0:02 / 3:01-3:06 補填 3. Brown Sugar ★2:06-2:31 / 4:25-4:48(演奏後曲間) 補填 4. Midnight Rambler ★4:27-4:37 / 13:31以降(演奏後曲間) 補填 5. Rip This Joint ★丸ごと別ソース 6. Street Fighting Man ★0:00-0:01 / 3:33以降 補填 7. Jumping Jack Flash ★丸ごと別ソース 8. Sympathy For The Devil ★0:00-0:11 補填 Bonus Track Madison Square Garden, New York City, NY, USA 24th June 1975 9. Rip This Joint ★これもアナログ盤から収録