ローリング・ストーンズの絶頂1973年ヨーロッパ・ツアーの素晴らしさは『NASTY MUSIC』を始めとした名盤の元になったKBFHのラジオ放送だけでなく、今やオフィシャル『BRUSSELS AFFAIR』によって永遠のものとなりました。そうしたマルチトラック収録の音源に恵まれただけでなく、オーディエンス録音のクオリティに恵まれている点も本ツアーの素晴らしさを広めてくれる点で非常に重要な役割を果たしてくれています。9月28日のミュンヘン公演を捉えたオーディエンス録音もまたその典型と呼べるのではないでしょうか。都合二回行われたミュンヘンでのショーはどちらもモノラルながら非常に聞きやすい音質の音源が存在していますが、今回リリースいたしますはアーリー・ショー。程よい距離感と非常にクリアーな音質が魅力ゆえアーリー・ショーはこれまでSODDの『AN AFTERNOON IN MUNICH』、DACの『MUNICH AT LEAST』といったアイテムがリリースされてきましたが、マニア間においては後者がベストバージョンとされてきたものでした。このような複数アイテムが生み出されたという事実だけでも、アーリー・ショー音源の素晴らしさを物語るエピソードではないかと。そんな73ヨーロッパ定番オーディエンスの一つに着目した「Graf Zeppelin」が大幅なブラッシュアップを敢行。先のようなアイテムが生み出されたことからも解るかと思われますが、本音源は20年近くに渡ってマニア間に出回ってきた定番73オーディエンスの一つでもある。そこを2023年の最新テクノロジーと、何より「Graf Zeppelin」の卓越した仕事ぶりによって見事に生まれ変わったのです。元々ミュンヘンのアーリー・ショーは「クリアで聞きやすいが薄っぺらい」という印象が強く、それは先に挙げた二つのアイテムに共通するジレンマでもありました。ところが、です。今回のリリースに際して「Graf Zeppelin」の取り組みとその仕上がりは圧巻。クリアーな一方でチャーリーのシンバルが目立ち、なおかつトータルな音質は薄っぺらい…という状態が今回は厚みと深みがマシマシ、それでいて本音源の魅力でもあるクリアーさがより澄み渡っている。そして何と言ってもナチュラルな聞き心地が格別。よくある押しつけがましいイコライズとは別次元な仕上がりが全編に渡って輝きを放っており、先の既発盤に比べると違いは歴然。さらにタイミングの良いことにDAC盤においてカット個所の補填要員として数秒レベルながら用いられていた「recorder 2」のアッパー版が登場してくれたのです。これを公開してくれたのは先日リリースされて大好評な『FRANKFURT 1990』のドイツの音源コレクターによるものでして、結果として本編「recorder 1」はもとより、「recorder 2」のパートまではっきり音質が向上しており、2023年に相応しい文句なしのベスト・バージョンのリリースが可能となりました。そんなクリアーで聞き心地抜群のアーリー・ショー音源が伝えてくれるのは、圧倒的なミックの存在感。本録音の定評の高さは音質だけでなく、彼を中心とした非常にハイテンションな演奏の素晴らしさも挙げられるでしょう。とにかくミックはライブ全編を通して絶好調であり、圧巻の絶叫を余裕たっぷりにかましてくれる。あまりに彼の声がデカく、それほど当日の出音は彼の声が目立っていたのかと思いきや、キースの「Happy」ですらミックの声がデカく(=一本のマイクで歌っていてもなお)まるでこの日は彼がキースの代わりに歌っているのかと錯覚しそうになるほど。それでいて73ヨーロッパならでの「Gimme Shelter」におけるテイラーの技巧、あるいは73ヨーロッパの魅力が詰め込まれた「Midnight Rambler」の爆裂演奏といった魅力も満載。アーリー・ショーからしてこの調子であり、それでいてキレッキレなテンションとも違う余裕のあるテンションの高さ。中でもミックの凄まじい熱唱は別次元としか言いようがない。そしてボーナスにはレイト・ショーから当時テレビで放送された三曲を収録。「Brown Sugar」以外は不完全な放送というのが玉に瑕ですが、れっきとしたサウンドボードということでアナログ時代から格好のボーナス要員とされてマニアにはおなじみの音源。これもまた『FRANKFURT 1990』を公開してくれたマニアが最新バージョンにて過去最高の音質を実現。ただロックに疎いテレビ局が放送したらしく、ミックスのセンスが歌謡曲っぽい仕上がりになっているのはご愛敬。それでも音質が非常に良いので十分に楽しめるのも確か。何よりミックを中心としたミュンヘンの爆裂パフォーマンスは圧巻、ミュンヘン公演からちょうど50年に相応しい新たなベストバージョンの誕生です!リマスター・メモ ★今回は2000年代序盤から流通するマスターからのデジタル化素材をベースに、最新公開された別ソースで一部を補填。この補填に使用した別ソースは、先の'90年フランクフルトのアップローダーによるもの。音源自体は実は既発DAC-066でも補填に使用されていたものですが、音質は飛躍的に向上していた、というもの。もっとも、補填もYou Can't Always終了後の歓声からMidnight Ramblerのアタマ迄の数秒ほどの短い区間ですが、DAC盤に使用されたマスターとは段違いのクオリティで繋ぎも違和感なし。 もっともこの補填パートにもカットがあるため、Midnight Ramblerは完成版とはなっていないのですが、、、★前後しますが、メインのマスターも既発DAC-066盤で使用されていたものと同じソースですが、ここではレンジ重視のマスタリング。適切な帯域調整はしつつ、むやみな音圧稼ぎ(=海苔波形=レンジが狭くなる)は極力控え、終始レンジの広い、ナチュラルかつ鮮度感のあるサウンドが堪能できます。★TVの3曲も'90年フランクフルトのアップローダーによるもの。適切な帯域分析と処理により、公開時点では中域がやかましく非常に癖の強かった質感が緩和し、かなり聞きやすくなっています。アナログ盤などでも収録されていたもので、それらでは軽めで位相もズレた粗めのサウンドだったりしましたが、ここではリマスター効果で厚みのあるナチュラルなサウンドとなっております。Live at Olympiahalle, Munich, West Germany 28th September 1973 PERFECT SOUND(UPGRADE) (77:49) Early Show 01. Introduction 02. Brown Sugar 03. Gimme Shelter 04. Happy 05. Tumbling Dice 06. Star Star 07. Dancing With Mr. D. 08. Angie 09. You Can't Always Get What You Want ★9:02以降別ソースで補填 10. Midnight Rambler ★0:00-0:02別ソースで補填 11. Honky Tonk Women 12. All Down The Line 13. Rip This Joint 14. Jumping Jack Flash 15. Street Fighting Man Bonus Tracks Analog TV Recording Late Show 16. Brown Sugar ★フル収録 17. Gimme Shelter ★中盤以降断片 18. Street Fighting Man ★終盤断片