英雄コージー・パウエルのキャリアでも最も異色にして(恐らく)最も巨大な成功作となったCINDERELLAの『LONG COLD WINTER』。公式作よりも濃厚なコージー色が楽しめるデモ・アルバムがブラッシュアップ。「最新トランスファー&GRAF ZEPPELINマスタリング」による最高峰更新サウンドをCDでリリース決定です。異色セッションを記録した異色のコージー・テープ 本稿を目に留められた方ならご存知と思いますが、CINDERELLAの2ndアルバム『LONG COLD WINTER』のメイン・ドラマーは我らがコージー。CINDERELLAの正式ドラマーはすでにフレッド・コウリーでしたが、レコーディングに際してプロデューサーのアンディ・ジョンズがフレッドの力量を問題視。セッション・ドラマーとしてコージーとデニー・カーマッシが呼ばれました。コージーは半ばシークレット参加だったのですが、全10曲のうち「Second Wind」以外の9曲でドラマーを務めたわけです。本作は、そんな異色セッションの現場を伝えるスタジオ・デモ。いわゆる“コージー・テープ”の1つで、インデックスに「TOM'S TAPE」手書きされたカセットから起こされた銘品なのです。もちろん、このセッションは古くからのコレクターにはお馴染み。当店のプレス名盤『LONG COLD WINTER SESSION』を体験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。本作は、その伝説テープから2023年の最新機材で再トランスファー。さらに「GRAF ZEPPELIN」の細密マスタリングで磨き直した最高峰更新盤なのです。最新トランスファー&細密マスタリングによる最高峰更新サウンド その鮮やかさは、確かに過去最高。大元のコージー・テープ自体は同じではありますが、そこから引き出された情報量が大きく上がっている。ドラム一発一発のアタック音が明らかに鋭く、鳴りもシャープ。もちろん、イコライジングではなくトランスファー精度による鋭さですから、耳に刺さるようなタイプではなく極めてナチュラルです。さらにわかりやすいのがノイズでしょうか。前回盤ではトランスファー段階で発生していた高周波ノイズ(11ー20kHz辺り)が一切なく、逆にテープ由来のヒスはよりきめ細やか(大きくなったわけではありません)になっている。テープに吸い込まれていたサウンドを機微の機微まで精密にデジタル化できているのです。本作は、そんな精度アップした新トランスファーをさらに「GRAF ZEPPELIN」マスタリングで磨き込んでいる。もちろん、「GRAF ZEPPELIN」マスタリングは出音音至上主義ですから、変更幅は大きくはない反面、異様なまでに緻密。1/1000秒の狂いも許さないピッチ/位相ズレの補正や帯域分析を経た上でのバランス調整も余念がありません。実のところ、トランスファー向上ほどの違いはないのですが、その中でも分かりやすいのは「Take Me Back」でしょうか。前回盤では半音の30%ほど低かったのですが、本作ではビシッとジャストに整っています。公式アルバムよりも濃厚なコージー色 そんな最高峰更新サウンドで甦ったのは、異色ながらも濃厚なコージー・カラーに彩られたスタジオ・セッション。ひと口に「デモ」と言っても作曲段階のメモ録音から最終盤との判別も難しい仮ミックスまで千差万別ですが、本作の場合は「作曲段階中期」といったところ。曲名はすでに決まっている(カセット・インデックスに手書きされています)くらいですが、アレンジは完全に未完成。「Coming Home」や「Take Me Back」は未完成ながらもトム・キーファーの仮歌が入っていますが、他はすべてインスト。トム自身と思われるアコギとエリック・ブリッティンガムのベース、それにコージーによるトリオ演奏が繰り広げられています(「Long Cold Winter」にはオルガンも聞こえますが、カート・ショアなのかジョン・ウェブスターなのかは分かりません)。そして、そのセッション段階が実にイイ感じ。何より、コージーらしさが全開! 完成版の『LONG COLD WINTER』はCINDERELLAカラーを優先したドラミングで、コージーと言われても「確か……に、そう……かも」という微妙な感じでした(一説によると「Second Wind」以外にもカーマッシの曲があるかも知れないそうです)。それに対し、セッション段階の本作ではそんな遠慮も配慮も忖度もなし。コージーが感じるままに奔放に叩いているのです。しかも、ブルース色も濃厚。そもそも『LONG COLD WINTER』自体が破格にブルージーなアルバムでしたが、作曲段階ではそのテイストが丸出し。そしてコージーもWHITESNAKEやピーター・グリーン時代を思わせるドラミングで対応している。「アメリカンHRバンド+コージー」というといかにも異色ですが、アメリカはアメリカでも本作の場合は「ブルースの本場」としての米国。極上のブルースロック・セッションをたっぷりと楽しめるのです。最後に、そんなセッションの雰囲気が透けるトムのコメントも付記しておきましょう。「コージーの名前が挙がった時に、彼ならできるって即座に思ったんだ。それでコージーに連絡した。彼は喜んで引き受けてくれたよ。2日ぐらいで飛んできてくれた。直ぐにスタジオに入って、一曲ずつ一緒にやりながら覚えてもらった。彼は凄く呑みこみが早かったよ。彼が来た最初の盤にワンテイク取れてしまった位だからね。ドラムセットはフレッドの物をそのまま使っていた。彼は凄いよ」ヘアメタル的なイメージからとかく軽視されがちな「CINDERELLA+コージー」セッション。実は渋みと力強さが同居する極上のブルースロック・アルバムでした。その激レアなセッション・アルバムが最高峰更新サウンドで甦った1枚。マスターカセットからの最新トランスファー!前回盤で見られた11、13、16、18、20kHz近辺の高周波ノイズが一切ないのがポイント ヒスノイズまで、きめが細かに聞こえる 7曲目ピッチ1.5%程度低かったのを補正『LONG COLD WINTER』のデモ・アルバム。コージー・テープ現物から最新トランスファー&GRAF ZEPPELINマスタリングを経て復刻されたサウンドは最高峰を更新。「LAメタル+コージー」という異色の組み合わせながら、力強く芳醇だった極上ブルースロック・セッションがたっぷりと楽しめます。Taken from the original master cassette tape (Maxell XL II) belonged to Cozy Powell (40:42) 01. Intro. 02. Coming Home 03. Gypsy Road #1 04. Gypsy Road #2 05. If You Don't Like It 06. Fallin' Apart At The Seams 07. Take Me Back 08. The Last Mile 09. Long Cold Winter 10. Don't Know What You Got (Till It's Gone) 11. Fire And Ice Tom Keifer - Electric & Acoustic Guitar, Vocals Eric Brittingham - Bass Cozy Powell - Drums