2023年8月24日、バーニー・マースデン永眠。UFOやPAL、そして何よりWHITESNAKEで名曲と名演の数々を残した英国ロックの名ギタリストでした。死因は公表されていませんが、妻や2人の娘に看取られ、72年の生涯に静かに幕を下ろしたそうです。今頃は、多くの方がWHITESNAKEの名盤をかけながら名ギタリストの想い出に身を委ねていることでしょう。もちろんそれも大切な事ではありますが、こんな時だからこそもっと幅広く、深くバーニーの音楽に触れ、彼の人生を祝福するのはいかがでしょうか。プライベート感覚満点のクリスマス・ギグ 本作は、そんな「今」にぴったりの名作ライヴアルバム。「2011年12月17日ティンジェウィック公演」の端麗オーディエンス録音です。普段ならツアー・スケジュールを掲載するところですが、当時のバーニーは大きなツアーは行っておらず、ロリー・ギャラガーに捧げた『BERNIE PLAYS RORY』『BALLYSHANNON BLUES FOR RORY』等を発表しつつ、彼自身のブルースロックと向き合っていました。本作が記録されたのは、そんな2011年のクリスマス時期。彼の地元バッキンガムシャーで、約150規模という極めてプライベートなギグを開催したのです。そのプライベート感満載な現場を真空パックした本作は、クラブの密室感たっぷりなオーディエンス録音。本作だけのオリジナル録音でして、そのサウンドは極めて端正で美しい。サウンドボードと間違えるようなタイプではないのですが、その空気感がクリアで繊細な演奏が機微の機微までくっきりと伝わる。しかも、ハコが極度に狭いために物理的に距離がないのでしょう。バーニーが目の前でギターを弾き、歌っているという「存在感」も肌感覚で味わえるのです。多彩で楽しいジュークボックス・ショウ そんな密室プライベート・サウンドで描かれるのは、プライベート感覚丸出しのステージ。前述の通り、当時はロリー・ギャラガーのカバー・プロジェクトが多かったのですが、本作はそれより遙かに多彩な有名曲が盛りだくさん。まさにプライベート・パーティ然とした「生演奏ジュークボックス」状態なのです。その楽しさを感じていただくためにも、ここで元ネタごとにセットを整理し直してみましょう。ルーツ系(7曲)・ブルース・スタンダード:Ramblin' On My Mind(ロバート・ジョンソン)/Baby What You Want Me To Do(ジミー・リード)・60年代:I Loved Another Woman(FLEETWOOD MAC)/Mustang Sally(ウィルソン・ピケット)/Born To Be Wild(STEPPENWOLF)/You Really Got Me(THE KINKS)/I Saw Her Standing There(THE BEATLES)同時代曲(9曲)・70年代:Rocky Mountain Way(ジョー・ウォルシュ)/Sweet Home Alabama(LYNYRD SKYNYRD)/Shakey Ground(THE TEMPTATIONS)・80年代:Ghost Blues(ロリー・ギャラガー)/Summer Of 69(ブライアン・アダムス)/Steamy Windows(ティナ・ターナー)/Purple Rain(プリンス)・その他:Sex On Fire(KINGS OF LEON)/Here I Go Again(WHITESNAKE)※注:( )内はカバー元のオリジナル・アーティスト。……と、このようになっています。バーニー自身の音楽キャリアは1972年にスタートしていますので、それ以前の「ルーツ系」と活動開始後の「同時代曲」に分けてみました。バーニーのオリジナルは「Here I Go Again」だけで、他はすべて有名曲カバーです。そして、その中身が予想以上にバラエティ豊か。「ルーツ系」ではブルースのスタンダードも演奏しつつ、メインは60年代のロック・ソング。ビートルズの「I Saw Her Standing There」やステッペンウルフの「Born To Be Wild」、キンクスの「You Really Got Me」など、ロック・ファンお馴染みの名曲群ばかりが選ばれています。もっと楽しいのが「同時代曲」。70年代の名曲群やロリー・ギャラガーは想定内として、モダンなティナ・ターナーの「Steamy Windows」やプリンスの「Purple Rain」まで飛び出す。そして、極めつけなのがKINGS OF LEONの「Sex On Fire」でしょう。この曲は2008年にリリースされ、英国でも120万枚の大ヒット。当時のイギリスでは知らぬ者はいないリアルタイムの最新ヒットまで演奏しており、実際に現場ではイントロだけで喝采が沸き、サビで合唱が起きる。いかに本作がパーティ感覚なのか、これだけでもご理解頂けるでしょう。地元の仲間とクリスマスを熱く、楽しく盛り上がっていたバーニー・マースデン。そんなプライベートな会場に見目麗しい美サウンドで同席できるライヴアルバムです。ここにいるバーニーは元WHITESNAKEではなく、黒人に憧れるホワイト・ブルースマンでもない。無心に音楽を愛し、友人達と音楽で戯れる「音楽人」なのです。かしこまった公式作品群では味わえないバーニー・マースデンの素顔。「2011年12月17日ティンジェウィック公演」の端麗オーディエンス録音。本作だけのオリジナル録音で、極めて端正で美しい。空気感がクリアで繊細な演奏が機微の機微までくっきりと伝わり、バーニーが目の前でギターを弾き、歌っているという「存在感」も肌感覚で味わえる。「Here I Go Again」以外はすべて有名曲カバーというクリスマス・ギグで、ブルースはもちろん、ビートルズやティナ・ターナー、プリンス、ロリー・ギャラガー等の多彩なレパートリーはまるでジュークボックス。地元の仲間達と気軽に楽しむバーニーに出逢えるプライベート・アルバムです。Tingewick Village Hall, Buckinghamshire, UK 17th December 2011 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) R.I.P. Bernie Marsden (7th May 1951 - 24th August 2023) Disc 1 (49:09) 1. Intro. 2. Loved Another Woman 3. Baby What You Want Me To Do 4. Ghost Blues 5. Rambling On My Mind 6. Summer Of 69 7. Rocky Mountain Way 8. Band Intro & Speech 9. Sweet Home Alabama Disc 2 (55:39) 1. Sex On Fire 2. Steamy Windows 3. Mustang Sally 4. Born to be Wild 5. Here I Go Again 6. You Really Got Me 7. Shakey Ground 8. I Saw Her Standing There 9. Purple Rain Bernie Marsden - Guitar, Vocals Jim Kirkpatrick - Guitar Chris Cliff - Bass Neil McCallum - Drums