半生の相棒となるザック・ワイルドとの第一歩を踏み出した『NO REST FOR THE WICKED』時代のオジー・オズボーン。その黎明の刹那を伝えるオリジナル・マスターが登場です。そんな本作に吹き込まれているのは「1988年7月14日ロンドン公演」。今はなきクラブ“タウン&カントリー(現:O2 Forum Kentish Town)”で記録された強力オーディエンス録音です。本作最大のポイントは、ザック加入後初のクラブ・ツアーをフル体験できること。どれほど直後だったのか、『NO REST FOR THE WICKED』時代の活動全景から振り返っておきましょう。1987年《5月:ザック・ワイルド加入》・7月28日+12月15日:ウォームアップ(2公演)1988年《5月:ギーザー・バトラー加入》・7月7日ー23日:英国(12公演)←★ココ★《9月28日『NO REST FOR THE WICKED』発売》・11月16日ー12月31日:北米#1a(29公演)←※NO REST FOR THE ROSEMONT他 1989年・1月6日ー30日:北米#1b(16公演)←※OAKLAND 1989・2月27日ー3月10日:日本(7公演)←※BLOODBATH IN FESTIVAL他・3月29日ー5月5日:欧州(27公演)・6月1日ー8月5日:北米#2(37公演)←※PHILADELPHIA 1989・8月13日:Moscow Music Peace Festival ←※公式映像《8月:ギーザー・バトラー脱退》これがザック加入からギーザー・バトラー離脱までの歩み。『NO REST FOR THE WICKED』完成後に盟友ギーザーを迎えたオジーは、アルバム発売/本格ツアー開始を前に母国イギリスで肩慣らし的なミニ・ツアーを実施。本作のタウン&カントリー・クラブ公演は、その一幕でした。この「英国」レッグの新・決定盤『REDCAR 1988』も登場しますので、さらに日程をフォーカスしてみましょう。「英国」レッグの詳細・7月7日ー10日(3公演)*7月11日『LEICESTER 1988』・7月13日:ロンドン公演*7月14日:ロンドン公演 ←★本作★*7月15日『REDCAR 1988』・7月17日ー23日(5公演)より長尺で力強いオリジナル・マスター……と、このようになっています。本作は『REDCAR 1988』の前日でもあったわけです。熱心なコレクター諸兄なら『THE TREASURE TAPES 1983-1991』の1988年録音もご記憶かと思いますが、実はあの名録音も本作と同じショウ(以前はハマースミス公演と言われていましたが、現在ではリサーチが進み、タウン&カントリー・クラブと判明しています)。ただし、ショウは同じでも録音自体はまったく異なるオリジナル・マスターなのです。そのサウンドは超・強力。『THE TREASURE TAPES 1983-1991』版は瑞々しく繊細な美しさを誇っていましたが、力強さでは本作の方が圧倒的に上。芯の密度もみっちりと高く、猛烈にオン。恐らくは録音ポジションが相当に間近だったのでしょう。空間に距離感が生まれる前に耳元に届くダイレクト感が素晴らしいのです。さらに『THE TREASURE TAPES 1983-1991』版よりも決定的に優れている点が2つある。1つは冒頭「Bark At The Moon」。『THE TREASURE TAPES 1983-1991』ではヴォーカルがオフ気味に捉えられていましたが、本作では問題なく超・極太。これまで現場ミックスの美須賀と思われていましたが、どうやら録音側のミスだったようです。もう1つが「Tattooed Dancer」のドラムソロ。『THE TREASURE TAPES 1983-1991』版は思いっきりカットされてリプライズ部にワープしていましたが、本作は完全収録されています。レア曲「Damon Alcohol」だけではないクラブの現場 そんな極太サウンドで描かれるのは、ザックを得てストリート感覚に回帰したオジーのフルショウ。まずは何より激レア曲「Damon Alcohol」も美味しいわけですが、それ以上にクラブの密室感がスゴい。オジーも“THE ULTIMATE SIN Tour”では思いっきり煌びやかだったわけですが、1988年はまるっきり反対のクラブ・ツアーに打って出た。本作は、その密室の熱量を肌感覚で味わえるのです。そもそも、この変更はシーンの必然でした。当時はバブリーなLAメタルが飽和を迎え、ストリート感覚のGUNS N' ROSESの世紀の大ブレイクを果たした。その後、90年代のグランジ勃興にも繋がる「リアル重視」への大転換期だったのです。もちろん、1988年当時だと他のベテラン勢は変化を予感しつつも、まだ正解が見えていない段階。WHITESNAKEが『SERPENS ALBUS』のツアーが大盛況でもあったわけです。ところが、嗅覚鋭い直感派のオジー(シャロン?)は真っ先にイメージを切り替え。ワイルドでアグレッシヴなザックを迎え、“クラブ・ツアー”というストリート感覚とセットで売り出したのです。ダイヤモンド・デイヴやドラゴンと戦うロニーが苦戦と迷走に陥っていく90年代に、なぜオジーが超大物でクールな存在で居続けられたのか。このクラブツアー「英国」レッグは、そんな時代の分水嶺。本作は、その歴史的な現場に立ち会えるオリジナル・マスターです。美しさはいまだ『THE TREASURE TAPES 1983-1991』版の方が上ですが、本作は遙かにリアルで力強く、何よりも長尺。長きにわたるザック時代でも最重要のクラブ・ツアー、ぜひ本作でフル体験してください。「1988年7月14日タウン&カントリー・クラブ」公演の強力オーディエンス録音。『THE TREASURE TAPES 1983-1991』とは異なる別録音のオリジナル・マスターで、よりオンで力強く、さらに長尺。従来録音ではヴォーカルがオフ気味だった「Bark At The Moon」もダイレクト感たっぷりですし、「Tattooed Dancer」のドラムソロもばっちり収録。激レア曲「Damon Alcohol」も美味しいクラブの現場をフル体験できます。Disc:1 (37:24 )1. Carmina Burana 2. Bark At The Moon 3. Suicide Solution 4. Mr. Crowley 5. Damon Alcohol 6. Shot In The Dark 7. I Don't Know 8. Flying High Again Disc:2 (45:02) 1. Band Introductions 2. Bloodbath In Paradise 3. Guitar Solo 4. Sweat Leaf 5. War Pigs 6. Tattooed Dancer 7. Drum Solo 8. Tattooed Dancer(reprise) 9. Iron Man 10. Crazy Train 11. Paranoid Ozzy Osbourne - Vocals Zakk Wylde - Guitar Geezer Butler - Bass Randy Castillo - Drums John Sinclair - Keyboards