UFOが1980年前半に行った「NO PLACE TO RUN」ツアーは5月半ばの全米ツアー終了をもって一段落し、バンドは次回作の製作と、例年通り8月下旬に出演が予定されているレディング・フェスティバルへの準備に取り掛かりました。しかしその矢先の'80年6月、キーボードとサイドギターでバンド・サウンドの土台を支えていたポール・レイモンドが脱退し、マイケル・シェンカーのM.S.G.へ参加するという出来事が起きます。バンドはこの緊急事態にポール・チャップマンの紹介でジョン・スローマンを迎え入れ、7月中はこのスローマンがキーボードを担当する形で新作アルバムの製作を継続します。しかしバンドとしてはキーボードだけでなく、サイドギターやコーラスまでステージでマルチに担当できるプレイヤーを求めていた事から、スローマンはアルバムでの参加に留まり、レイモンドの正式な後任プレイヤーとして元WILD HOSESのニール・カーターがバンドに加わる事となりました。UFOはカーターを含む新ラインナップで8月23日のレディング・フェスティバルに出演し、ヘッドライナーの大役を果たしました(なお、翌24日のヘッドライナーがWHITESNAKEです)。バンドは9月に「THE WILD, THE WILLING AND THE INNOCENT」となる新作を仕上げると、10月からはアルバムリリースに先立って大規模なヨーロッパツアーを開始。新作アルバムへ強い意気込みを見せていたバンドは積極的なプロモーション活動を行います。本作に収録された'80年11月26日のドイツ・ドルトムント公演もその一環として、ドイツの音楽番組"ROCKPALAST"のために収録されたライヴです。ROCKPALASTといえば、あのRAINBOWの「LIVE IN MUNICH 1977」に代表されるように、貴重で優れたライヴ映像の宝庫。本映像もその例に漏れず、観る者にマスター・クオリティを確信させる最高の音質と画質で、チャップマン時代のレアなプロショット映像を75分に渡って完全収録しています。はっきりとした輪郭とにじみの少ない画像は、こちらもオフィシャル・リリース可能ではないかと思わせるレベルです! この時点では「THE WILD, THE WILLING AND THE INNOCENT」がリリースされる約2ヶ月前ですが、セットリストには「Chains Chains」や「Long Gone」がすでに取り上げられています。これら'80年代UFOを代表する名ナンバーを最高の形で楽しめるのはファン冥利に尽きるというもの。特に叙情性とドラマ性を両立した「Long Gone」は、最初期の演奏からすでに名曲としてのポテンシャルを発揮しています!ショウ中盤以降は「NO PLACE TO RUN」ツアーの要素を残しており、「Cherry」から「Only You Can Rock Me」の流れ、「Love To Love」と「Mystery Train」の組み合わせを楽しむ事ができます(その中間に位置する新曲「Making Moves」も必聴です)。マイケル・シェンカーとは全く異なるタイプながら、B.C.RICHを弾きまくるポール・チャップマンはテクニック・ステージング共にクールです。彼は地味な印象があるプレイヤーかもしれませんが、ステージ映えするたたずまいはなかなか見事で、野性的なピート・ウェイの力強いアクションと並んでも画面的に何ら見劣りしていません。フィル・モグが「No Place To Run」等で聴かせるブルージーな歌唱も個性に溢れており、彼らメンバーそれぞれの存在感は、本作のような優れた映像で観ると一層引き立つというものです。「Lights Out」・「Doctor Doctor」・「Rock Bottom」といったマイケル時代の名曲でもチャップマンのプレイは冴えており、バンドサウンドには確かな聴き応えがあります。この'80年から'81年あたりをピークとして、UFOは次第にその勢いを失っていきますが、この時点ではまだ彼らならではのパワフルな演奏を、ブリティッシュらしい湿り気とアメリカ市場を志向したキャッチーな音楽性を併せ持つ、極上の楽曲群で楽しむ事ができます。'80年のUFOを知る上で欠かせないファン必携のライヴ・マテリアルを、この機会にどうぞお楽しみください! Live at Westfalenhalle, Dortmund, Germany 29th November 1980 PRO-SHOT 1. Chains Chains 2. Lettin' Go 3. Long Gone 4. Cherry 5. Only You Can Rock Me 6. No Place To Run 7. Making Moves 8. Love To Love 9. Mystery Train 10. Too Hot To Handle 11. Lights Out 12. Rock Bottom 13. Doctor Doctor Phil Mogg - Vocals Paul Chapman - Guitar Pete Way - Bass Andy Parker - Drums Neil Carter - Guitar, Keyboards PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 75min.