本作が撮影されたのは「1997年11月16日モスクワ公演」。当時の解散ツアー“THE LAST HURRAH TOUR”の一環で訪れたロシア公演の模様です。“THE LAST HURRAH TOUR”と言えば、大規模な日本公演からスタートしたことでも記憶に残っていますが、その後の足取りは意外と知られていません。良い機会ですので、ここで整理してみましょう。 ・1997年9月12日-27日:日本ツアー(11公演)・1997年10月3日-11日:UKツアー#1(7公演)・1997年10月13日-11月9日:欧州ツアー(19公演)・1997年11月11日-23日:東欧ツアー(9公演) ←★ココ★・1997年11月26日-12月1日:UKツアー#2(5公演)・1997年12月6日-13日:南米ツアー(4公演) 以上が(当時の)サヨナラツアーの概要。日本公演だけで11回という規模も凄いですが、全体を見渡すと55公演と小ぶり。ゲフィン移籍後から大票田であったはずの北米が一切ないという珍しいツアーでもありました。そんな中で本作は「東欧ツアー」の5公演目。全体では42公演目にあたり、いよいよ「解散」の2文字が現実味を帯びてきたタイミングでのショウでした。そんなモスクワ公演を収めた本作は、極上にも極上を極まるマルチカメラ・プロショット。“THE LAST HURRAH TOUR”は長編プロショットに恵まれており、「11月21日ソフィア公演(ブルガリア)」「12月13日ブエノスアイレス公演(アルゼンチン)」も有名。本作と合わせて「1997年の3大プロショット」と呼ばれているわけですが、その中でも本作のクオリティは群を抜いて素晴らしい。当初は不完全で画質の悪いテレビ放送もありましたが、後に登場した完全版はクオリティも完全。カメラワーク・ステレオサウンドボードの音声・ビビッドな発色も美しい鮮度……すべてが問答無用のオフィシャル級。正真正銘のオフィシャル作品を復刻した『STARKERS IN TOKYO』にも負けない超絶映像美なのです(ついでにカヴァデールや機材の調子に至るまで、すべてのポイントで本作がベストです)。そのクオリティで描かれる“THE LAST HURRAH TOUR”は、他のいかなるツアーとも異なる「ここだけの白蛇」がたっぷりと味わえる。1987年の大ブレイク以来、おおよそ白蛇のショウは『SERPENS ALBUS』を軸としたヘヴィメタル仕様なのですが、この“THE LAST HURRAH TOUR”は、解散ツアーということもあって“歴史の総括”がテーマ。オープニングから「Walking In The Shadow Of The Blues」を始めとして「Hit & Run Intro/Ready An' Willing」「Lovehunter」「Don't Break My Heart Again」といったクラシックスネイクの名曲群を散りばめ、さらには「Mistreated」「Soldier Of Fortune」といったDEEP PURPLE、それに「Too Many Tears」「Restless Heart」というこのツアーだけの新曲まで幅広いセレクションなのです。そんなセレクション以上に「ここだけ」感が吹き出すのは、演奏&アレンジ。エイドリアン・ヴァンデンバーグをバンマスに据えつつ、そのアレンジはメタルではなく、極めてオーセンティック。当時は「初期の白蛇が蘇った」とも言われましたが、ブルース・マニアなバーニー・マースデン&ミッキー・ムーディの泥臭さはまるでなく、どこか小粋でお洒落。音楽的センスで業界を渡り歩く職人たちを揃え、ヘヴィメタル時代とは違って意味でゴージャスで、言わば「渋味も着こなすセレブなロック」といった風情。当時の音楽誌ではライター同士が「白蛇はAORになった」「全然違うだろ」と誌上議論を交わしていましたが、「AOR」とまでは言わないまでも、言いたくなる気持ちは分かる……そんなバランス感覚がオフィシャル級の超絶映像でたっぷりと堪能できるのです。 このツアーの後、一度はソロ活動に足を踏み入れたカヴァデールですが、ツアーの計画が上手くいかず、数年で“ヘヴィメタルな白蛇”を復活させることになります。結局のところ、彼のキャリアに“ソロシンガーのツアー”は存在しないわけですが、そこでやろうとしてショウはどんなものだったのか。その幻にもっとも近かったのは、“THE LAST HURRAH TOUR”に間違いない。そして、その最高峰クオリティのプロショットが本作なのです。彼のキャリアでもひときわ珍しく、ひときわ重い意味を持つ極上プロショット。美声映像『STARKERS IN TOKYO』と共に、“ソロシンガー:デヴィッド・カヴァデール”にもっとも肉薄する極上プロショットをたっぷりとお楽しみください。 Live at Luzhniki Sports Complex, Moscow, Russia 16th November 1997 PRO-SHOT 1. Intro 2. Walking In The Shadow Of The Blues 3. Give Me All Your Love 4. Love Ain't No Stranger 5. Too Many Tears 6. Hit & Run Intro/Ready An' Willing 7. Mistreated 8. Lovehunter 9. Slow An' Easy 10. Soldier Of Fortune 11. Oi 12. Band Introduction 13. Is This Love 14. Restless Heart 15. Don't Break My Heart Again 16. Fool For Your Loving 17. Here I Go Again18. Ain't No Love In The Heart Of The City 19. Still Of The Night 20. We Wish You Well David Coverdale - Vocal Adrian Vandenberg - Guitar Steve Farris - Guitar Tony Franklin – Bass Denny Carmassi - Drums Derek Hilland - Keyboards PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.101min.