全盛期の貴重なマルチカメラ・プロショットをコンパイルした2時間超えの映像作品がリリース決定です。そんな本作に収められているのは、4つのテレビ番組。そのうち3つは30分を超える長尺番組で、じっくりと“動くABBA”を堪能できる傑作コンピレーションです。それでは、早速それぞれ個別にご紹介していきましょう。 【1976年3月:THE BEST OF ABBA(11曲)】 まず最初に登場するのは、本作のタイトルにもなっている“THE BEST OF ABBA”。世界一のABBA人気を誇るオーストラリアの特番です。この番組が撮影されたのは「1976年3月11日+12日シドニー」。当時は最大のヒット作『GREATEST HITS』発売の4ヶ月後にあたり、シングル『Fernando』のリリースも控え、いよいよ一大全盛期を迎えようとしていた刹那でした。そんな時代に絶大なABBA人気を誇るオーストラリアで製作された特番は、ファンの間で伝説ともなっている大傑作。局内スタジオで司会者も入れずに4人が挨拶や曲紹介をしながらマイム演奏を繰り返していくというもの。おおよそは通しの撮影にも見えますが、曲毎に細かくセットや衣装も変化していく。日本で言うなら「夜のヒッ○スタジオ」をABBAだけで約40分進行していくような番組なのです。 そして、そのセレクションはまさに「目で観るGREATEST HITS」。『ABBA』の「Tropical Loveland」「Rock Me」も歌いますが、それ以外の9曲はすべて『GREATEST HITS』のナンバー。オリジナル・アルバム至上主義が定着した洋楽ではベスト盤は軽視されがちですが、A BBAの場合はイーグルスやQUEEN、エルトン・ジョンなどと共に『GREATEST HITS』も歴史的名盤とされている。その映像版とも言える番組なのです。 【1975年9月:MADE IN SWEDEN FOR EXPORT(3曲)】 続く2つめの番組は1976年1月の“MADE IN SWEDEN FOR EXPORT”。スウェーデンのテレビ局SVTで製作されたもので、Lill LindforsやBjornSkifsなどと共に出演した45分間の特番でした。本作では、そのうちのABBAの3曲「Mamma Mia」「I Do, I Do, I Do, I Do, I Do」「So Long」を収録しています。この番組もマイムですが“THE BEST OF ABBA”よりもPV的な作り。「MADE IN SWEDEN FOR EXPORT(スウェーデンからの輸出品)」とはABBA自身のことで、「Mamma Mia」では輸入業者のオジサン達とベニー&ビヨルンがドタバタを演じ、その前でアグネッタとフリーダが歌う。そして、「So Long」では業者の倉庫内で勝手にスタジオを設営して激しくパフォーマンスするのです(オジサン達は「なんだコレ? うるせぇなぁ」と小芝居)。その2曲の合間になぜか唐突に挟まるのが「I Do, I Do, I Do, I Do, I Do」。ここでは世界観がまるで違い、野原でサックス隊が並ぶ中、4人がピクニック風にくつろぎながら歌っている。まさしくMTVによるPV時代を先取りするような映像で、スタジオ風景が多い本作ではひと際印象的です。 【1976年10月:ABBA IN POLAND(10曲・11テイク)】 3つめは1976年制作のテレビ特番“ABBA In Poland”。マニアにはお馴染みの番組ではありますが、本作は貴重な1978年の日本放送バージョンです。そして、日本放送ならではの日本語字幕こそがポイント。曲名が時代がかった手書きテロップで乗せられ、ほとんど曲で歌詞の日本語訳も映し出される。これまたテレビ局内スタジオに観客を入れたマイム演奏がメインなのですが、そのセットや演出が極めて70年代。“THE BEST OF ABBA”が「夜のヒット○タジオ」だとすれば、こちらは「ザ・ベス○テン」の趣き。日本で収録されたわけではないのですが、妙に懐かしさを掻き立てられる番組なのです。そして、セレクションは「動くARRIVAL」とでも言えるもの。移動シーンでは「S.O.S.」「Nina, Pretty Ballerina」も流れるものの、メインのスタジオに入ってからは『ARRIVAL』ナンバーの一気呵成。「Fernando(これも豪州盤のARRIVALに収録されていました)」も挟みつつ、アルバムの半分以上となる6曲が大盤振る舞いされていきます。 さらに滲み出す世界的な時代感も美味しい。撮影されたのは1976年10月のワルシャワなのですが、当時のポーランドは“鉄のカーテン”の向こう側。ABBAの故国スウェーデンがポーランドと歴史的に関わりが深いこと、北欧諸国でも特に政治的に中立だったことが関係しているのかも知れませんが、70年代にテレビ出演が実現したわけです。それだけ貴重な事件だったからこそ異国へ向かう飛行機の中も一種独特なムードで、わざわざマネージャーもインタビューに応えて「このテレビ出演は無料で引き受けた」と話す。そして空港に待ち構えた報道陣と群衆もしっかりと映され、さらに番組の終盤には「ポーランドに来たことは大変な経験だった」「素晴らしい聴衆でした」と語るのです。 【1981年4月:DICK CAVETT MEETS ABBA(8曲)】 最後に登場するのは、グッと時代を経た1981年4月。故国スウェーデンで製作された“DICK CAVETT MEETS ABBA”です。ここまでの番組は歌いながらもスタジオでの振り付けパフォーマンスをフィーチュアしていましたが、この映像は完全にステージ。アグネッタ&フリーダは(カメラ目線でこそあるものの)振り付けもなくハンドマイクでしっかりと歌い込み、周囲を固めるバンドも演奏に没頭。「Gimme! Gimme! Gimme!」と「Super Trouper」もメドレーアレンジで披露するなど、アイドル面ではなくABBAの音楽的な側面を前面に押し出した映像です。そして、セット内容も上記の3番組よりもグッと後期。被るのは「Knowing Me, Knowing You」くらいで、後は『THE ALBUM』以降の名曲が目白押し。シングルのみの「Summer Night City」も演奏する。当時は『THE VISITORS』の製作が始まったばかりのタイミングでリリースまで半年以上あるのですが、早くも「Two for the Price of One」「Slipping Through My Fingers」も披露しています。以上、4番組・33曲・2時間3分。『GREATEST HITS』から『THE VISITORS』まで、全世界を席巻したABBA。その輝く姿をマルチカメラ・プロショットで一望できる映像作品です。いかに4人が素晴らしい名曲を作り、世界を魅了していったか。それを百の言葉を超える光景で実感させてくれる1枚。ぜひ、この機会にお試しください。 The Best Of ABBA: Sydney, Australia March 1976 ABBA In Poland: Warsaw, Poland 7th & 8th October 1976 Dick Cavett Meets ABBA: Stockholm, Sweden April 1981 Programme 1 The Best Of ABBA Filmed in Sydney, Australia March 1976 1. Mamma Mia 2. Hasta Manana 3. Ring Ring 4. Tropical Loveland 5. Waterloo 6. I Do, I Do, I Do, I Do, I Do 7. Rock Me 8. Honey Honey 9. Fernando 10. So Long 11. SOS Made In Sweden For Export 12. Mamma Mia 13. I Do, I Do, I Do, I Do, I Do 14. So Long Programme 2 ABBA In Poland: Japanese Broadcast Version Filmed in Warsaw, Poland 7th & 8th October 1976 Broadcast Date: 29th December 1978 1. Waterloo 2. S.O.S. 3. Interview 4. Nina, Pretty Ballerina 5. Dancing Queen 6. My Love, My Life 7. When I Kissed The Teacher 8. Knowing Me, Knowing You 9. Fernando 10. Tiger 11. Money, Money, Money 12. Fernando Programme 3 Dick Cavett Meets ABBA SVT Studios, Stockholm, Sweden April 1981 1. Gimme! Gimme! Gimme! (A Man After Midnight)/Super Trouper 2. Two for the Price of One 3. Slipping Through My Fingers 4. Me and I 5. Knowing Me, Knowing You 6. Summer Night City 7. Thank You for the Music 8. On and On and On PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 123min.