ソロ時代の2大プロショットである「1969年トロントのロックンロール・リバイバル・コンサート」と「1972年ニューヨークのONE TO ONEコンサート」。その極上日本放送バージョン3種をカップリングした3枚組が登場です。1969年トロント公演は『SWEET TORONTO』、1972年ニューヨーク公演は『THE ONE TO ONE』『LIVE IN NEW YORK CITY』としてリリースもされた超有名映像。公式品のコピーや起こしではありません。近年になって日本で独自放送されたバージョン。デジタル放送だけに公式品に匹敵するクオリティを誇りつつ、さらに番組独自の特色も盛り込んだ別バージョンをDVD化したものなのです。似たような日本放送版をご紹介しましたが、本作はそれとも異なる放送で、本作の方が(遙かに)完成度が高い。3つの番組をディスク1枚に収録していますので、それぞれ個別にご紹介していきましょう。 【DISC 1:TORONTO 1969(2010年放送版)】 まず登場するのは、2010年12月12日……つまり、30回忌の4日後に衛星放送された『TORONTO 1969』。ライヴアルバム『平和の祈りをこめて』にもなった「1969年9月13日:ロックンロール・リバイバル・コンサート」で、エリック・クラプトンや後にYESへ参加するアラン・ホワイト、クラウス・フォアマン、そしてオノ・ヨーコと共に出演した際の映像です。この放送も基本的には『TORONTO 1969』に準じるのですが、まったく同じではない。再生すると流れるのは、この映像の監督を務めたD・A・ペネベイカー氏のインタビュー。そう、この作品に入りやすくするための独自ドキュメンタリーが付属しているのです。これがなかなか秀逸。監督の生インタビュー以外はお馴染みの映像が使用されてはいるものの、当事者ならではのコメントが生々しく、「撮影を決めた頃がビートルズの終わりだった」「あの頃起きた事を見てほしい」といった肉声には実感がこもっている。また、インタビューだけではなく日本語ナレーションによってソロ活動を始めた状況やショーの背景、プラスティック・オノ・バンドの結成、さらには主夫時代や死……といった「ビートルズではないジョン」も解説されていく。新たな新事実などはないものの、ショウへの下準備として非常に完成度が高いのです。某放送協会版ではムッシュが解説を担当。それはそれで味わいがあったのですが、本作の方が遙かにスマートで作品然としています。本作はオープニング・シーンからしっかりと収録。画質も素晴らしく、ナチュラルなフィルム発色のまま。その無加工な発色が美しく、しかもデジタル放送なので劣化もありません。さらに大きいのは番組独自の日本語字幕。その頻度がまるで違う。MCの一言一言に逐一字幕が付けられているのです。もちろん、「Oh」や「Yeah」には入りませんが、「Alright」には「いいわ」、「Good! Go on, come on!!」には「いい感じだ さあ!」と、意味がある言葉にはすべて付く。これによって極めて自然に、ビビッドに内容が理解できるのです。 【DISC 2:THE ONE TO ONE(2012年放送版)】 続くディスク2は、2012年10月20日に放送された『THE ONE TO ONE』。マディソン・スクエア・ガーデンで開かれた障害児施設の援助を目的としたチャリティ・コンサートで、ソロで本格的なツアーを行わなかったジョンにとってはビートルズのライヴ活動停止以来、唯一のフル・コンサートでした。この日は“昼の部”と“夜の部”が行われ、それぞれが撮影。編集されて映像作品になりました。このショウは2つの公式作品『THE ONE TO ONE』『LIVE IN NEW YORK CITY』に残されていますが、その内容は大きく異なる。このディスク2は『THE ONE TO ONE』ですが、これは1972年当時にテレビ放送された映像をベースにしつつ、数曲カットされたもの。そのために時間は約40分と短めなのですが、全編“夜の部”がが使用されているのが大きい。実は、“昼の部”はジョンにとって久々の本格的なステージであり、しかもマディソン・スクエア・ガーデンという大舞台。ジョンも緊張してしまい、なかなか本領が発揮できなかったのです。それに対し、“夜の部”は緊張も(幾分)ほぐれ、勢いのある名演となっている。特に「Come Together」は段違いで、ジョンとエレファンツのウェイン・テックス・ガブリエルがマイクを分け合って歌った挙句、ジョンが最後に「stop the war!」と叫んで(当時泥沼化していたベトナム戦争のこと)終えるなど、非常にテンションが高いのです。また、オープニングを務めたスティーヴィー・ワンダーやロバータ・フラックのステージも数曲収録しているのも大きな違いです。そんな『THE ONE TO ONE』を収録しているわけですが、こちらも『TORONTO 1969』と同じく某衛星放送局によるもので、やはりクオリティは特級。ドキュメンタリーはありませんが、ショウの意義を説明するオープニングシーンから収録され、日本語字幕で内容を読む事もできます。 【DISC 3:LIVE IN NEW YORK CITY(2006年放送版)】 最後のディスク3は、2006年1月8日に放送された『LIVE IN NEW YORK CITY』。“ジョン・レノン没後25周年追悼企画”と題して放送されたものです。こちらは1986年に公式リリースされたバージョンで、『THE ONE TO ONE』がショウの後半部だったのに対し、こちらは前半部をメインに収録されています。先述した通り、こちらは“昼の部”と“夜の部”が組み合わされており、緊張するジョンの姿も垣間見える。「It's So Hard」の演奏後には思わず「リハーサルへようこそ」と口走ってしまったり、「Mother」では声が思うように出ないのか、歌いながら首を傾げたり。もちろん、この放送でもMCに日本語字幕がしっかりと入るため、そうした言葉の機微もはっきりと分かります。そして、本作の3番組のうち、この映像の字幕が一番ありがたい。ジョンやヨーコのメッセージMCが多く収録されており、より重要なのです。もちろん、日本版レーザーディスク起こしでも字幕は見られましたが、本作の対訳は番組独自でより自然。例えば、日本版LDではヨーコが「みんな、今こそ私たちが変わる時なのよ」と叫んでいるところで、本作では「兄弟よ、今こそ世界を変えるときです!」となっている。元の言葉は「Sisters and brothers, This is time of change!!」で何を変えるか明言していませんが、続く曲が女性解放の「Sisters O Sisters」であり、「世界」の方がしっくりと来る。また、ハイライトの「Give Peace A Chance」も大きい。『THE ONE TO ONE』ではスティーヴィー・ワンダーやフィル・スペクター、アレン・ギンズバーグ、SHA NA NAといったオールキャストの後半をメインに収録していましたが、こちらはまったく逆で前半部を収録している。ここではヨーコが長いヒトラーの声明を読み上げており、字幕がないと厳しい。ここでもニュアンスや言葉遣いが微妙に違っており、日本版LDで「ロシアはその力を持って我々を脅かしているのだ」と語るところが「ロシアは子分のネズミたちを使って我々を脅そうとしている」となっている。ヒトラーの言葉には「little mice」と使われており、本作の方がヒトラーらしい侮蔑のニュアンスも伝わるのです。ソロ・アーティスト:ジョン・レノンを象徴する3つの映像作品を日本放送版でまとめ直した3枚組です。いずれもオフィシャル版に肉薄するデジタル・クオリティでありながら、独自の字幕やドキュメンタリーで新たな表情を見せてくれる別バージョン・セット。 Disc 1(57:07) Toronto 1969 Varsity Stadium, Toronto, ON, Canada 13th Sept 1969 Broadcast Date: 12th December 2010 1. Intro feat. exclusive interview with D.A. Pennebaker 貴重 2. Bo Diddley (Bo Diddley) 3. Hound Dog (Jerry Lee Lewis) 4. Johnny B. Goode (Chuck Berry) 5. Lucille (Little Richard) 6. Introducing John Lennon 7. Blue Suede Shoes 8. Money 9. Dizzy Miss Lizzie 10. Yer Blues 11. Cold Turkey 12. Give Peace A Chance 13. Don't Worry Kyoko 14. John, John Disc 2(40:09) The One To One Madison Square Garden, New York, NY. USA 30th August 1972 Broadcast Date: 20th October 2012 1. Introduction 2. Superstition (Stevie Wonder) 3. Reverend Lee (Roberta Flack) 4. Somewhere (Roberta Flack) 5. Come Together 6. Instant Karma(We All Shine On) 7. Sisters, O Sisters 8. Cold Turkey 9. Hound Dog 10. Give Peace A Chance 11. Imagine (End Credits) Disc 3(54:27) Live In New York City Madison Square Garden, New York, NY. USA 30th August 1972 Broadcast Date: 8th January 2006ジョン・レノン没後25周年追悼企画 1. Introduction 2. Power To The People / New York City 3. It's So Hard 4. Woman Is The Nigger Of The World 5. Sisters O Sisters 6. Well Well Well 7. Instant Karma! 8. Mother 9. Born In A Prison 10. Come Together 11. Imagine 12. Cold Turkey 13. Hound Dog 14. Give Peace A Chance PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.152min.(total)