『THE EYES OF ALICE COOPER』で王道ショック・ロックへと回帰した2003年の帝王アリス・クーパー。そのフルショウを特等席から目撃できる映像作が登場です。そんな本作が撮影されたのは「2003年10月22日ウェストベリー公演」。そのオーディエンス・ショットです。2003年は、アリスにとって大きなターニング・ポイントでした。1977年の『LACE AND WHISKEY』までは参謀ボブ・エズリンと独自のショック・ロックを創出していったアリスですが、その後は時代性を受け入れるスタイルに変更。25年に渡って音楽を変え続けていった。そんな彼が久々に王道に回帰したのが2003年だったのです。その辺の事情をイメージするため、ここでアリスの略歴を振り返ってみましょう。成功前夜(1969年-1970年)『PRETTIES FOR YOU』『EASY ACTION』王道時代(1970年-1977年)『LOVE IT TO DEATH』『KILLER』『SCHOOL'S OUT』『BILLION DOLLAR BABIES』『MUSCLE OF LOVE』『WELCOME TO MY NIGHTMARE』 『GOES TO HELL』『LACE AND WHISKEY』変遷時代(1978年-2001年)・ハードポップ路線#1:『FROM THE INSIDE』・ニューウェーヴ路線:『FLUSH THE FASHION』『SPECIAL FORCES』『ZIPPER CATCHES SKIN』『DADA』・ヘヴィメタル路線:『CONSTRICTOR』『RAISE YOUR FIST AND YELL』 ・ハードポップ路線#2『TRASH』『HEY STOOPID』・王道コンセプト作:『THE LAST TEMPTATION』・インダストリアル路線:『BRUTAL PLANET』『DRAGONTOWN』王道回帰時代(2003年-現在) ←★ココ★『THE EYES OF ALICE COOPER』『DIRTY DIAMONDS』『ALONG CAME A SPIDER』『WELCOME 2 MY NIGHTMARE』『PARANORMAL』 これが約50年に及ぶ帝王アリスのキャリア。かなり豪快・大雑把にまとめていますし、勝手に「変遷時代」などと命名しているのも恐縮至極。その辺は心を広く持って頂き、おおよその流れにご注目ください。エズリンと決別したアリスは『FROM THE INSIDE』から『DRAGONTOWN』までアルバム数枚ごとにコロコロと路線を変えており、四半世紀の中で王道スタイルだったのはコンセプト作『THE LAST TEMPTATION(1994年)』くらい。常に時代時代の“最先端の音”を貪欲に吸収してはアリス節を多彩なサウンドでコーティングして楽しませてくれました。そんな25年に終始を打ったのが力作『THE EYES OF ALICE COOPER』。時代性とは決別し、「これぞアリス!」と膝を叩くポップなショック・ロックを追究。以降、現在に至るまで王道を貫き続けています。もちろん、アリス自身が手応えを感じ、歓待を受けたからこそ、以後17年に渡って王道を続けられている。本作は、そんな第一弾ツアーの現場を体験できる映像作品なのです。さて、そんな“EYES OF ALICE COOPER TOUR”のウェストベリー公演で撮影された本作はステージ右側2階席からやや見下ろし気味に撮影されているのですが、会場が狭いのかやけに近い。序盤の「No More MR. Nice Guy」辺りまではうろうろ歩き回る観客もいるので「遮蔽物ゼロ」と断言するわけにもいかないのですが、ショウが乗ってくるほどそうした人影はなくなり、視界をステージが占領していく。そこからズームで迫るデジタル画質が凄まじく、止め画ならプロショットに見えるほどです。しかも、サウンドも極上。帝王にしては狭い箱のせいなのか、芯がダイレクトに手元に届き、演奏も歌声もビビッドで詳細。スネアの音色にオーディエンスらしさもあるものの、いわゆるホール鳴りによるボケや濁りが一切感じられず、ライヴアルバムとしても十二分に通用する極上サウンドなのです。そんな映像美で描かれるのは、新旧の王道ナンバーが一同に介したフルショウ。王道回帰の初期映像と言えば、公式『LIVE AT MONTREUX』が象徴ですが、本作はツアーも異なるのでセットもかなり違う。ここで比較しながら整理してみましょう。70年代ナンバー(14曲)・LOVE IT TO DEATH:Long Way To Go(★)/I’m Eighteen/The Ballad Of Dwight Fry ・KILLER:Be My Lover/Desperado(★)/Halo Of Flies(★)/Under My Wheels・SCHOOLS OUT:Schools Out・BILLION DOLLAR BABIES:Hello Hooray(★)/No More MR. Nice Guy/Billion Dollar Babies・WELCOME TO MY NIGHTMARE:Welcome To My Nightmare/Cold Ethyl(★)/ Only Women Bleed 80年代以降のナンバー(7曲)・TRASH:Poison・THE LAST TEMPTATION:Lost In America・THE EYES OF ALICE COOPER:Man of the Year(★)/Between High School & Old School/What Do You Want From Me?/Novocaine(★)/I'm So Angry(★) ※注:「★」印は公式『LIVE AT MONTREUX』では観られない曲。……と、このようになっています。近年では各時代のレア曲を披露してもいますが、回帰直後の本作は王道路線ナンバーを徹底的に演奏。黄金のクラシックスだけでなく、『THE EYES OF ALICE COOPER』の新曲群や90年代唯一の王道作『THE LAST TEMPTATION』からもセレクト。例外なのが大ヒット曲「Poison」だけという徹底ぶりなのです。もちろん、路線が王道だからと言ってド定番だけなわけではない。新曲の中でも「Man of the Year」「Novocaine」「I'm So Angry」辺りは、このツアーでしか演奏されていないレア曲ですし、極めつけは何と言っても『LOVE IT TO DEATH』の「Long Way To Go」。1972年以来、31年ぶりの大復活ナンバーです。そして、そんなセットを演じるメンバーは『LIVE AT MONTREUX』にも参加したライアン・ロキシー/エリック・シンガー/チャック・ギャリックの3人を核とし、ガンズの“USE YOUR ILLUSION TOUR”にも参加したキーボーディスト:テディ・“Zig Zag”・アンドレディス、SLASH’S SNAKEPITのシンガーでもあったエリック・ドーバーがギターで参加しています。25年の刻を経て王道に回帰した帝王アリス・クーパー。そのフルショウを特等席からたっぷり楽しめる映像作品です。現在でも王道を貫いてはおりますが、ここまで濃厚に、徹底的に“アリス・ロック”なショウはそうそうない。まるで70年代ノリでイキイキと弾ける帝王に出逢える1枚。 Westbury Music Fair, Westbury, NY, USA 22nd October 2003 AMAZING SHOT!!! 1. Intro 2. Hello Hooray 3. No More MR. Nice Guy 4. Man of the Year 5. Billion Dollar Babies 6. Between High School and Old School 7. Long Way To Go 8. Be My Lover 9. Lost In America 10. What Do You Want From Me 11. Eighteen 12. Desperado 13. Halo Of Flies 14. Welcome To My Nightmare 15. Cold Ethyl 16. Only Women Bleed 17. The Ballad Of Dwight Frye 18. Schools Out 19. Poison 20. Novocaine 21. I'm So Angry 22. Band Introduction 23. Under My Wheels Alice Cooper - Vocals Ryan Roxie - Guitar Eric Dover - Guitar Chuck Garric - Bass Eric Singer - Drums Teddy Zig Zag - Keyboards COLOUR NTSC Approx.98min.