ポールマッカートニーは2002年にツアーを再開して以来、離婚問題で忙殺された2006年以外ほぼ毎年のようにコンサートないしツアーを行なっている。ツアー・タイトルもDRIVING TOUR、BACK IN THE WORLD TOUR、GOOD EVENING TOUR、UP AND COMING TOUR、OUT THERE TOUR、ON THE RUN TOUR、ONE ON ONE TOUR、FRESHEN UP TOURなどなど実に多彩で、その都度セットリストを入れ替え、目玉となる「古い新曲」を採り入れ、聴衆を楽しませてくれている。本作は数あるツアーの中から、2009年夏に行なわれたSUMMER LIVE ‘09と題されたツアーより、2009年7月11日カナダはハリファックス公演を収録している。2009年末の欧州ツアーは「GOOD EVENING EUROPE TOUR」と変わっており、SUMMER LIVE ‘09ツアーは、この年の夏に北米における僅か10公演のみ行なわれた短期ツアーである。 【SUMMER LIVE ‘09】先に僅か10公演のみと書いたが、ハイライトはニューヨークのシティ・フィールドで行なわれた3連続公演であろう。ビートルズが最大のコンサートを行なった伝説の地であるシェア・スタジアムが老朽化の為再建される事になった、そのシェアにおける最後のコンサートはビリー・ジョエルであった。ポールはそのビリーのコンサートにゲスト出演し、シェア・スタジアム有終の美に華を添えている。そして新築されシティ・フィールドと名を変えた新しいスタジアムの杮落しのコンサートがポールだったのである。そしてシェアでのゲスト出演の返礼で今度はビリー・ジョエルがポールのステージにゲスト出演した。またツアー中の7月15日にはLATE SHOW with DAVID LETTERMANという番組に出演し、インタビューとは別に、会場となったED SULLIVAN THEATERのベランダで、道路を封鎖したニューヨークの街でミニ・ライヴも行なっている。この会場は名前の通りビートルズ初渡米の際に出演したエド・サリヴァン・ショウの収録が行なわれたポールにとっても想い出の場所である。かように僅か10公演の短いツアーでありながら、内容的に非常に充実した記憶と記録に残すべきツアーであった。 【GOOD EVENING NEW YORK CITY】このツアーより公式に『GOOD EVENING NEW YORK CITY』というタイトルでシティ・フィールドの音と映像が、そして前述のエド・サリヴァン・シアターでのミニ・コンサートが映像でリリースされている。どの曲がどの日の公演から収録されているのかは明らかにされていないが、公式の常であるようにシティ・フィールドにおける三日間のベスト・テイクが採用されていると思われる。このライヴ・アルバムがリリースされたのが2009年11月であることを考えると、コンサートが終わって僅か数か月でのスピード・リリースである。そして非常に紛らわしい事に、2009年12月よりGOOD EVENING EUROPEという新たなツアーが目前というタイミングでのリリースであること、同じ年のツアーだから構わないと判断したのだろう、SUMMER LIVE ‘09ツアーで収録されたにも関わらずタイトルが「GOOD EVENING NEW YORK CITY」であり、ジャケットのアートワークはGOOD EVENING EUROPEツアーのポスターと同じデザインが使用されている。つまり実際の収録公演とタイトル&アートワークが間違っているのである。もちろんマニア的な視点におけるという前提であるが、実際の内容を反映していない事に違いはない。 【LIVE ON COMMONS HALIFAX】本作はこのSUMMER LIVE ‘09ツアーより、初日2009年7月11日カナダはハリファックス公演をプロショットで収録したタイトルである。おそらくリリースが決定していたシティ・フィールドに先立ち、そのリハーサルを兼ね直前公演であるハリファックスでも撮影を行なったのであろう。ツアー中唯一のカナダ公演である。当日はオール・スタンディングでかなり混乱の中で始まったと伝えられている。そしてツアー初日ということ、唯一のカナダ公演ということで、この後のアメリカでのコンサートと比べても異色のものとなっている。最たる特徴的なのは「夢の旅人」を演奏している点が挙げられる。この曲はそれまで英国内で最大セールス記録を持っていた「She Loves You」を超えるヒット作となり、ウイングス時代のポールを代表する楽曲である。ご存知の通りスコットランドの伝統楽器であるバクパイプを大々的に採り入れた曲なだけに、ステージで再現するには大規模なバグパイプ楽団が必要となる。その為コンサートで演奏するにはその地に楽団がある事が条件となる。それがグラスゴーであり、ここカナダである。SUMMER LIVE ‘09ツアーで唯一「夢の旅人」が演奏されたのが、本作に収録のハリファックス公演なのである。また、このツアーの特徴をいくつか述べておく。この時点で最新アルバム『MEMORY ALMOST FULL』より「Only Mama Knows」「Dance Tonight」の2曲が披露されている。最新アルバムとはいえリリースが2年前と古い事がわずか2曲の採用にとどまったのであろう。それでも「Only Mama Knows」がセットリストに入っているのはわずかな期間であるため貴重なライブ・テイクといえる。またファイアーマンの2008年のアルバム『ELECTRIC ARGUMENTS』から「Highway」「Sing The Changes」もセットリストに入っている。別名プロジェクトとはいえ、これがこの時点でポールの最新の曲である。前述の「夢の旅人」はアンコールで演奏されているツアー中で唯一のテイク。そして本作の画竜点睛を欠く部分なのだが「I Saw Her Standing There」1曲のみオーディエンス録音となっている。なぜこの1曲のみ収録されなかったのか理由は不明だが、映像でも欠落しているため、元より撮影録音がなされなかったのだと思われる。本作のDVDにおいてもこの曲のみ2種類のオーディエンス撮影の映像で収録されている。本作はSUMMER LIVE ‘09ツアーより、2009年7月11日カナダはハリファックス公演をサウンドボードとプロショットでそれぞれ収録した2DVDである。2009年夏のツアーにおける決定盤であろう。002年より各ツアーを丹念にリアルタイムで追いかけ、いずれのツアーでも、これが代表作というものをリリースしている。2009年夏の北米ツアーにおいてはまさに本作がそれに相当する。 HALIFAX COMMONS HALIFAX NOVA SCOTIA CANADA July 11, 2009 DVD DISC ONE 01. Drive My Car 02. Jet 03. Only Mama Knows 04. Flaming Pie 05. Got To Get You Into My Life 06. Let Me Roll It 07. Foxy Lady 08. Highway 09. All My Loving 10. The Long And Winding Road 11. My Love 12. Blackbird 13. Here Today 14. Dance Tonight 15. Calico Skies 16. Mrs Vanderbilt 17. Eleanor Rigby 18. Sing The Changes 19. Band On The Run 20. Back In The USSR 21. Something 22. I've Got A Feeling 23. Paperback Writer 24. A Day In The Life - Give Peace A Chance 25. Let It Be 26. Live And Let Die 27. Hey Jude DVD DISC TWO 01. Day Tripper 02. Lady Madonna 03. Mull Of Kintyre 04. Yesterday 05. Helter Skelter 06. Get Back 07. Sgt. Pepper Reprise - The End BONUS FOOTAGES 08. I Saw Her Standing There (Audience Shot ) 09. I Saw Her Standing There (Audience Shot Quadra View) 10. NEWS Interview (Band On The Run rehearsal)