ビートルズが「ホワイト・アルバム」に続く新作に取り掛かったのは今から約50年以上前のこと。この時期は「ゲットバック・セッション」と呼ばれ、後にリリースされる映画「LET IT BE」の為にリハーサルから撮影が行われた結果、先のアルバム制作時に表面化していたグループ内の不和がエスカレートした時期のドキュメントとなってしまいました。そうした波乱含みに制作が進行していたものの、それでも最後はきっちりと屋上ライブで締めくくってみせたのが流石はビートルズ。元々ゲットバック・セッションがビートルズのライブ復帰を見据えた企画だったものの、当時あまりにビッグな存在と化してしまった彼らゆえ、ライブを行う案がどうしても具体化しない。ジョージに至ってはリハーサルの最中に一時的ながらグループを脱退しただけでなく、ライブを行うという企画自体に拒否反応を示していた。何とか元の鞘には収まったものの、進行し続けるレコーディングと映画の撮影の締めくくりとして、どうしても必要だったのがライブ・シーン。その妥協案というだけでなく、すぐに実行に移せるというメリットがあったことから実現したのが1月30日のアップル屋上におけるゲリラ・ライブだったのです。そう、ここに収録されているのは屋上ライブの映像。もちろん元になったのは映画「LET IT BE」ですが、そのバージョンは数年前に大きな話題を呼んだHMCがリリースしたもの。それを元に、あのLord Reithが屋上ライブ・シーンに手を加えて数年前に公開してくれたもの。彼はまず不自然だった色調を整えています。ポールやリンゴが屋上に現れた際に映し出される寒空の景色を見れば一目瞭然、今回の方が自然な色合いとなっている。そんな色調の調整以上に彼が編集において力を注いだこと、それは屋上ライブの演奏シーンを忠実に再現するというもの。例えば映画では「I've Got A Feeling」の最中で「いったい何のつもり?!」と叫ぶおばあちゃんの姿と声が映し出されたものですが、ここでは同じテイクを採用していたアルバム「LET IT BE」のテイクをアフレコさせ、さらに通行人のショットを被せておばあちゃんを抹殺(笑)し演奏シーンと音声が分断されることなく見通せるよう仕上げています。あのおばあちゃんの叫びがあるとないとでは大違いですよね。さらに次の「One After 909」では演奏の前でタクシーの運ちゃんが「これ新曲?いいね」と応えていましたが、その場面もカット。そしてHMC版では何故か音量が下がってしまっていた最後の「Get Back」の出だしを調整し、始めから正常な音量で見聞き出来るよう仕上げています。このように、いかにもマニアらしいこだわりで手が加えられた屋上ライブシーン。これは大ベストセラーとなったHMC版を見慣れた方でも楽しめること間違いなしです!! Apple Corps, 3 Savile Row, London, UK 30th January 1969 (22:04) 1. Rooftop Intro 2. Get Back 3. Don't Let Me Down 4. I've Got A Feeling 5. One After 909 6. Dig A Pony 7. Get Back 8. End Credit PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.22min.