「これが最後の日本かもね」……デイヴィッド・カヴァデール自身の不穏な言葉と共に日本にやってきたWHITESNAKE。前科のある人だけに信じたくはありませんが、もし、万が一本心なのだとしたら、最後のライヴ・イン・ジャパンになるのはどこなのか。そして、そこではどんなショウが繰り広げられたのか。その真実をえぐり出す傑作ライヴアルバムが4CDで登場です。その、“もしかしたら最後の日本公演”の舞台となったのは「2016年10月13日大阪国際会議場(グランキューブ大阪)」。本作は、そのライヴを2種類の極上サウンドで描ききった4枚組オーディエンス・セットなのです。今回のツアーからは既に『LOUD PARK 2016』もご紹介しておりますので、改めて日程を確認しておきましょう。 ・10月9日:さいたまスーパーアリーナ『LOUD PARK 2016』・10月10日:静岡市民文化会館・10月13日:大阪国際会議場 【本作】 このように、今回のジャパンツアーは白蛇史上でも最短タイとなる3公演(“SLIP OF THE TONGUE TOUR 1990”も3公演)でした。その最終公演でもある大阪は、ワールドツアー“THE GREATEST HITS TOUR 2016”の千秋楽でもありました(もちろん、来年になってシレッと日程が追加される可能性もなくはないのですが、現時点で発表されている日程は総て終了しています)。そんな記念碑となるショウを収めた本作は、極上音源を2種そろえた豪華4枚組。録音したのはいずれ劣らぬライヴ録音の達人達で、甲乙付けがたい極上サウンド。正直な話、今回のツアーからはベスト録音のみを商品化する心づもりではおりましたが、本作に収められた2本は幾多の録音の中でもズバ抜けていながら優劣が決められないほど素晴らしかった。「えいや!」で1本に決めようと思っても迷いが残り、スタッフ総出で話し合っても結論が出ない。そこで“もしかしたら最後”の重みも鑑み、極上記録が存在する以上は、両方とも永遠に残そうという結論になったのです。 そうして収められた2本のマスター。もちろん、同じショウを録音しているのですが、録音家も機材もポジションも違うのですから個性が異なります。それでは、各録音を個別にご紹介しましょう。 【ディスク1・2:RECORDER 1】 まず登場するのは、名うての録音家による作品。この録音家は日本人ではあるのですが、さまざまなジャンルの海外公演にも足を運び、世界を股にかけて録音を重ねている方。当店でも数々の名作をご提供くだってきましたが、今回はたまたま日本に戻っており、WHITESNAKEの最終公演を記録してくださったのです。その音質は「まるでサウンドボード」を地でいく凄まじいクリア・サウンド。もちろん、熱い大阪の熱狂も封じ込まれており、確実にオーディエンス録音なのですが、楽音の鋭いエッジ、輝くような“鳴り”、間近なダイレクト感はライン録音に匹敵するグレイト・サウンドなのです。何よりも素晴らしいのは、金属的な輝き。昨年の“THE PURPLE TOUR”とメンバーは同じですが、今回はゲフィン時代『SLIDE IT IN』『SERPENS ALBUS』『SLIP OF THE TONGUE』の3枚に焦点を合わせた“THE GREATEST HITS TOUR”。そのせいか、今回のサウンドマンはやたらメタリックな出音にしており、本作はその魅力を正確に活写しているのです。そのサウンドの魅力は、冒頭から炸裂。ギラッと輝くエッジを立てながら疾駆する「Bad Boys」も最高ですし、「SLIDE IT IN」ではオリジナルとは異なるソロも極めてカラフル。さまざまなギターヒーロー達と歴史を刻んできたWHITESNAKEですが、今のレブ・ビーチ&ジョエル・ホークストラはテクニックもセンスも歴代No.1の呼び声高いコンビ。1人ひとりがスティーヴ・ヴァイばりに派手でありながら奇抜ではなく、エイドリアン・ヴァンデンバーグばりに楽曲を理解しつつ、ともすればジョン・サイクスを意識しすぎていたダグ・アルドリッチよりも自由。そんな2人は相性も素晴らしく、「1+1>2」のマジックを発散しながら独自のオブリガートやソロを挟み込んでいくのです。 この2人の鮮やか個性は、明らかにDEEP PURPLEナンバーよりもキラめく“ゲフィン時代WHITESNAKE”に向いており、昨年を遙かに凌駕する輝くギターワークを存分に発揮している。この「RECORDER 1」は、その輝きを最大限に引き出し切った名録音なのです。 【ディスク3・4:RECORDER 2】 ディスク1・2だけで褒め言葉を使い切ってしまった気もします(苦笑)が、続くディスク3・4の「RECORDER 2」も、猛烈な名録音。世界的な名手に半歩も引かないサウンドをモノにしたのは、お馴染み“西日本最強テーパー”氏です。今回は関東にも遠征し、“LOUD PARK 16”でも無類の録音技術を見せつけてくださいましたが、白蛇と共に故郷へ戻り、ホームグラウンドで真価を叩きつける名録音をキメてくださったのです。そのサウンドは輝くような「RECORDER 1」とも異なり、トータルのスケール感に溢れたもの。2人の録音家はいずれも1階席前方で録音したらしく、クリアは五分。しかし、ギターにやや特化していた「RECORDER 1」に対し、「RECORDER 2」は重低音のリズム隊までもバランス良く、ド迫力のライヴアルバムなのです。同じ“メタリック”とは言っても、「RECORDER 1」は鋭いエッジに、「RECORDER 2」はバンド全体の突進力を捉えた録音とでも言えばいいでしょうか。原稿を書くために聴き直している今になっても、やはりどちらがベストとも決められない……。そんな「RECORDER 2」の迫力サウンドは(ギターの2人はもちろんのこと)、トミー・アルドリッジのドラミングが腹に響き、カヴァデールの歌声に胸が焦がされる。既に66歳だというのに「powerful」の言葉を一身に体現した強烈な打音に一切の陰りも見えないトミーのドラミングは怖ろしいほどですが、主役カヴァデールの歌声も凄い。トミーとは逆にキャリアの重みを正直に吐露する歌声でもあるのですが、そこに宿る気迫は“いつも”とは違っている。すでに各所で「去年より声が出ている」「凄いパワーだ」と話題になっていますが、そんな評判を裏付ける気迫。もちろん、バラードではかつての美声を想起させますが、それ以上に自らのすべてをさらけ出し、ノドではなく生き様を振り絞るような魂の声。ワールドツアー最終日の充実感なのか、「最後の日本」の決意が成せるものなのか……。その歌声が現場の感情を熱く揺さぶっているのがリアルに伝わるライヴアルバムなのです。 兎にも角にも、WHITESNAKEは本作を残して日本を後にしました。今まで幾度となくバンドを解体し、1997年には引退ツアーを行ってきたカヴァデール。その都度復活し、最近では「『THE PURPLE ALBUM』が最後」の言葉も「あれは間違いだった」とも言っている。それだけに「これが最後の日本かも」発言もウソだと信じたい。しかし、それにしては本作の凄絶な歌声は、あまりにも真に迫っている……。本作をもってワールドツアーを終え、冬眠に入った白蛇。再び目覚める日を信じ、願いつつ。 Live at Grand Cube, Osaka, Japan 13th October 2016 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) Recorder 1 Disc 1 (52:58) 1. My Generation 2. Intro. 3. Bad Boys 4. Slide It In 5. Love Ain't No Stranger 6. Deeper The Love 7. Fool For Your Loving 8. Ain't No Love In The Heart Of The City 9. Judgment Day 10. Reb Beach Guitar Solo 11. Joel Hoekstra Guitar Solo 12. Slow An' Easy Disc 2 (48:14) 1. Bass Solo 2. Crying In The Rain 3. Drum Solo 4. Crying In The Rain (reprise) 5. Band Introduction 6. Is This Love 7. Give Me All Your Love 8. Here I Go Again 9. Still Of The Night 10. Burn 11. We Wish You Well Recorder 2 Disc 3 (53:09) 1. My Generation 2. Intro. 3. Bad Boys 4. Slide It In 5. Love Ain't No Stranger 6. Deeper The Love 7. Fool For Your Loving 8. Ain't No Love In The Heart Of The City 9. Judgment Day 10. Reb Beach Guitar Solo 11. Joel Hoekstra Guitar Solo 12. Slow An' Easy Disc 4 (48:13) 1. Bass Solo 2. Crying In The Rain 3. Drum Solo 4. Crying In The Rain (reprise) 5. Band Introduction 6. Is This Love 7. Give Me All Your Love 8. Here I Go Again 9. Still Of The Night 10. Burn 11. We Wish You Well David Coverdale - Vocal Joel Hoekstra - Guitar Reb Beach - Guitar Michael Devin - Bass Tommy Aldridge - Drums Michele Luppi - Keyboards