「プログレッシヴ・ロックの夜明け」となった歴史的大名盤、『DAYS OF FUTURE PASSED』。「世界初のコンセプトアルバムのひとつ」と讃えられ、「ロックとクラシックの最初にして完全なる融合」との誉れも高き傑作中の大傑作。その原初の姿を忠実に蘇らせた世紀の1枚がで登場です。1967年にリリースされ、ビートルズの『SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND』と並び、文字通り歴史を変えた1967年の大名盤ですが、現在のCDは、完全なオリジナルではありません。オリジナル・マスターは既に破損しており、1978年の再発以降はリミックス・バージョンで制作・販売され続けています。もちろん、これだけの歴史上の大名盤だけに世界中のマニアが“原初の姿”を求め、オリジナル・リリースのLPから復刻されたブートレッグを追い求めてきたわけですが、本作はそれらとは一線を画したもの。なんと、プレスカッティングされる前のテープを由来とする“オリジナル・マスターに最接近”した1枚なのです。そんな本作の大元になったのは、通称“EUROPEAN COPY TAPE”と呼ばれるもの。通常、音楽アルバムは各国にマスター・リールを送り、そこからLP/CDを制作します。先ほども述べた通り、母国イギリスの『DAYS OF FUTURE PASSED』オリジナル・マスターは失われてしまったわけですが、ヨーロッパ盤は生きていた。プレス工場の倉庫に眠っていた未使用マスターは、いつしか収集家の世界へ消えていき、長い間“伝説”として語り継がれてきました。しかし、近年になってその大元リールから復刻されたテープが再び世に出てきた。それが“EUROPEAN COPY TAPE”。そんな“伝説の音”をダイレクトにデジタル化したのが本作なのです。実際、本作のサウンドは幾多のLP起こしとはまったくの別次元。なにしろ、大元は製品LPはおろか、“製品の元”になるはずだった音。しかも、完全に未使用なのですから、いかに大元マスター・リールの「コピー」とは言っても、それはオリジナルLPと同じジェネレーションということ。その鮮度は現行リミックス・バージョンCDにさえ匹敵し、一切の曇り・濁り・歪みもない。この50年でもっとも見目麗しき“原初の音”が詰まっているのです。もちろん、鮮度は現行オフィシャルCDと並んでも、中身はまるで違うオリジナル・ミックス。音色・バランスは全編にわたって細かく異なるわけですが、より大きなポイントをご紹介しますと……。 ・「Dawn: Dawn is a Feeling」 オーケストラ・イントロの後、現行リミックスではやや唐突にマイク・ピンダーの歌が入りますが、オリジナルはメロトロン・サウンドに乗って優しく入ってきます。 「The Morning: Another Morning」 レイ・トーマスのヴォーカルのステレオ感がまるで違う。リミックスでは左右に大きくセパレートしていますが、オリジナルはやや左寄りに固まっている。さらに歌パートからオーケストラ・パートへ移行するフルートのフレーズも回数が違います。 ・「Lunch Break: Peak Hour」 現行リミックスではオーケストラのイントロ・パートが「1分53秒」ありますが、オリジナルは13秒短い「1分40秒」でフェイドアウトします。 ・「Evening: Evening Time to Get Away」 この曲は大きく違う。現行リミックスでは、サビの後のブリッジでもジョン・ロッジが独りで歌っていますが、オリジナル・ミックスではぶ厚いダブルヴォーカル。このパートのバックヴォーカルは失われてしまったようです。また、エンディングで「evening time to get away」と繰り返すところも2回ではなく、3回になっています。 ・「Evening: The Sunset」 現行リミックスでは消えていたピアノフレーズが聴けるほか、“through the night”と歌うパートにかかるリヴァーブの種類が異なっています。 ・「Evening: Twilight Time」 現行リミックスでは全体的にバックヴォーカルが入っていますが、オリジナル・ミックスは要所にだけ入ります。 ・「The Night: Nights in White Satin」 言わずと知れたヒット曲もオリジナルは異なっていました。メロトロンとフルートには深いリバーブが掛かっておりオーケストラにリズムが入ってくるタイミングがやや遅く、「Late Lament」に入る前のストリングスも異なっています。そしてラストの銅鑼は現行リミックスとは別テイクと思われ、フェードアウトすることなく最後まで長めに入っています。 LPの約41分を“1日の物語”でまとめあげ、オーケストラとロックの扉を開いた大名盤『DAYS OF FUTURE PASSED』。1978年以降、長年渡って心身に染みついてきたリミックスと、正真正銘のオリジナル・ミックス、そのどちらが音楽的に優れているかはさておき、世界に衝撃を与え、歴史を動かした“音”は間違いなく本作です。PINK FLOYDがシド・バレットとサイケデリック・ロックに明け暮れていた1967年に、“コンセプト”と“オーケストラ”という2つの可能性でロックの可能性を世界に見せつけたサウンド。まさにコンセプト王のめざめです。プログレッシヴ・ロックにとって、いや英国ロックそのものにとって最重要な1枚。 Original stereo mix from a European copy tape (41:21) 1. The Day Begins - Morning Glory 2. Dawn: Dawn Is A Feeling 3. The Morning: Another Morning 4. Lunch Break: Peak Hour 5. The Afternoon: Tuesday Afternoon 6. Evening: Evening Time To Get Away 7. Evening: The Sunset 8. Evening: Twilight Time 9. The Night: Nights In White Satin 10. The Night: Late Lament Mike Pinder - mellotron, piano, tambura, vocals (including spoken) Ray Thomas - flutes, percussion, piano, vocals Justin Hayward - acoustic & electric guitars, piano, sitar, vocals John Lodge - bass, vocals Graeme Edge - drums, percussion, vocals Peter Knight - conducting, arrangements The London Festival Orchestra