今年11月の来日公演も迫ったYES。高鳴る胸をさらに熱くしてくれるライヴアルバムが登場です。本作は、“USA 2016 TOUR”の序盤「2016年7月31日ベツレヘム公演」のオーディエンス・アルバムです。「あれ? 7月?」と思われた方は鋭い。実は、このツアーからは既に8月5日『WALLINGFORD 2016』や8月14日『ALBANY 2016』をご紹介済み。ここで一番近い『WALLINGFORD 2016』との距離感を感じていただきましょう。 ・7月25日ランカスター公演(ツアー初日)・7月27日コロンバス公演 ・7月28日ノースフィールド公演 ・7月30日アトランティックシティ公演 ・7月31日ベツレヘム公演 【本作】 ・8月2日ルイストン公演 ・8月4日リン公演 ・8月5日ウォリングフォード公演 『WALLINGFORD 2016』 これが“USA 2016 TOUR”冒頭の8公演。このように、本作は最新ライヴではなく、『WALLINGFORD 2016』の3公演前となるコンサート。“USA 2016 TOUR”でも5公演目となるライヴアルバムなのです。しかし、本作はライヴが最新でなくとも、登場したのは最新。実は、今回のツアーは音源に恵まれていない。『WALLINGFORD 2016』『ALBANY 2016』以降も無数の録音が登場してはいるのですが、肝心のクオリティが今ひとつ。本来であれば、YESと共にツアーを併走していきたいのですが、最初に極上サウンドの『WALLINGFORD 2016』『ALBANY 2016』をご紹介したこともあり、今さら半端なサウンドをお届けするわけにも行かない……そんな歯がゆい日々が続いているのです。しかし、そんな想いをしているのは私たちだけではなかったようです。何とも引き締まらない録音状況に業を煮やしたのか、それとも活を入れたかったのか、ライヴから時間が経ったにも関わらず、極上サウンドの銘品が登場した。それが本作なのです。実際、本作のサウンドは極上。極太の低音域、繊細な中音域、輝く高音域、それら総てが詳細でクリア。特にオーディエン最大の難題になりやすいベースまでもが素晴らしく、ゴリゴリとした1音1音のニュアンスまで克明でありながら、床の震えさえ伝わりそう。「まるでサウンドボード」と呼ぶに相応しい鮮やかさながら、YESのオーディエンス最大の旨みでもある“天から降り注ぐ”感覚までもしっかりとあり、ギターの“鳴り”はウットリするほどに豊か。サウンドのニュアンスは違いますが、クオリティの次元は『WALLINGFORD 2016』『ALBANY 2016』と完全に同格。まさに「USA 2016 TOURのビッグ3」と呼ぶに相応しい銘品なのです。そのクオリティで描かれるショウもまた、素晴らしい。何よりも気になるのは、やはり日本公演でも目玉になる『海洋地形学の物語』でしょうか。ショウの構成は『WALLINGFORD 2016』『ALBANY 2016』と同じく“2部構成+アンコール”。第1部は「『ドラマ』再現+“I’ve Seen All Good People”+“Siberian Khatru”」、第2部は「“And You and I”+『海洋地形学』パート」。『海洋地形学』はアルバムの完全再現ではありませんが、「古代文明」の「Leaves of Green」パートを間に挟んで2大曲「神の啓示」「儀式」が並び、さながら一大組曲のよう。もし、『海洋地形学の物語』が2枚組ではなく、1枚アルバムだったら……。そんなイメージさえ浮かぶショウになのです。もうひとつ気になるのが、手術のためにツアーから離脱してるアラン・ホワイトに代わってスツールに座るジェイ・シェレン。元HURRICANE、BADFINGER、ASIA、GPS等といった経歴が並ぶ実力派であり、5公演目の本作でも早くもシャープなドラミングを聴かせてくれます。ビリー・シャーウッドのベースと相まって職人気質なビートがとにかく気持ちよく決まり、複雑なアルバム再現でも難なくこなしていく。日本公演までにアランが復帰してくれるのか気になりますが、万が一にジェイであっても申し分ないドラミングです。現在、“USA 2016 TOUR”は9月4日サンディエゴ公演をもって終了しており、次の公演地は日本です。本作のように遅れて名録音が登場する可能性もありますが、恐らくは本作こそ“日本公演前最後の傑作”となることでしょう。クリス・スクワイアを失い、それでも歩み続けることを選んだYES。そんな彼らに対面するまで、あと少し。この落ち着かない日々の供に、どうぞこの傑作をお選びください。 Live at Sands Bethlehem Event Center, Bethlehem, PA. USA 31st July 2016 TRULY PERFECT/ULTIMATE SOUND Disc 1(62:08) 1. The Young Person's Guide to the Orchestra 2. Machine Messiah 3. White Car 4. Does It Really Happen? 5. Into the Lens 6. Run Through the Light 7. Tempus Fugit 8. I've Seen All Good People 9. Siberian Khatru Disc 2(63:38) 1. Intro 2. And You and I 3. The Revealing Science of God 4. Leaves of Green 5. Ritual Disc 3(22:40) Encore 1. Audience 2. Roundabout 3. Starship Trooper Steve Howe - guitar, vocals Geoff Downes - keyboards, vocals Jon Davison - vocals, acoustic guitar, percussion Billy Sherwood - bass, vocals Jay Schellen - drums