つい先日、大絶賛の中に終了したYESの最新来日公演。そのキックオフ公演の最高サウンド盤が登場です。前回の来日はちょうど2年前の2014年11月。故クリス・スクワイア最後のコンサートともなりました。クリス存命中にも次なるツアーは決まっており、彼らは遺志を継いで活動続行を決意。その一環として日本にも戻ってきたわけです。良い機会ですので、ここでこの2年間の歩みを振り返っておきましょう。 ●2014年11月:日本(6公演) 《2015年6月28日:クリス急逝》 《2015年7月:活動続行を表明》 ●2015年8月-11月:北米#1(33公演)ー半年後ー ●2016年4月-6月:欧州(25公演)《2015年7月:アランが手術のために離脱》●2016年7月-9月:北米#2(28公演)●2016年11月:日本(6公演) 以上がこの2年間の出来事です。クリスの後任として元メンバーのビリー・シャーウッドを迎えて再始動した彼らですが、今年になってアラン・ホワイトが故障。椎間板に痛みを訴え、手術のためにツアーから離脱してしまいます。代打としてビリー人脈の実力派ジェイ・シェレン(元HURRICANE、BADFINGER、ASIA、GPS等)を配してツアーを続けました。当初、アランは「北米#2」の途中から復帰する予定だったものの結局は長引き、この日本公演から復帰。しかも、メインはジェイのままであり、ショウ終盤だけアランが登場するという異例の展開となったのです。本作は、そんな日本公演でも初日「2016年11月21日オーチャードホール公演」を収めたオーディエンス・アルバムです。オーチャード・ホールに足を運ばれた方も多いと思いますが、今回はこの会場で4公演もありました。実体験されたショウなのか気になる方もいらっしゃるでしょうから、日程で確認しておきましょう。 ・11月21日:オーチャードホール 【本作】 ・11月22日:オーチャードホール『TOKYO 2016 2ND NIGHT』 ・11月24日:大阪オリックス劇場『OSAKA 2016』 ・11月25日:Zepp Nagoya『NAGOYA 2016』 ・11月28日:オーチャードホール ・11月29日:オーチャードホール そんな初日を収めた本作は、実に素晴らしい極上録音。このショウは『TOKYO 2016 1ST & 2ND NIGHT』の一部としても速報レポートしましたが、本作は別録音家による別録音。サウンドも輪をかけて素晴らしい。いえ、速報のAmity盤4CDRに収録された録音も文句ナシに素晴らしかったのですが、本作の楽音はさらに鮮やか。「Amity 374」に比べるとエッジがキリッと立ち、透き通る透明感の中でキラキラと輝くようなサウンドなのです。そのサウンドは、まさに初日の頂点録音……いえ、「東京最強」と呼ぶに相応しい。今回のYESは異例の“録音激戦区”となっており、全公演でいくつもの名録音がひしめき合う異常事態。その中でも本作は頭ひとつ抜けた「東京ベスト」な録音なのです(まだ最終公演の録音まで出そろってはいないので断言しかねますが)。そのサウンドで描かれるYESショウがまた何とも素晴らしい! 今週は一気に4タイトルも登場するので繰り返しは避けますが、本作だけの最大の聴きどころは何と言っても「Ritual」。先述した通り、この日はアランの復帰第一夜。ショウはほとんどジェイ・シェレンがスツールに座っているのですが、「Ritual」中盤のパーカッション・パートでアランが登場するのです。「クリスに続いてアランまで……」と心配していましたが、その彼がステージに戻ってきた刹那に立ち会える。しかも、これは日本だけの感慨ではない。近年はアルバム再現をテーマにしていますが、『海洋地形学の物語』の部分再現を始めたのは「北米#2」から。その北米では全公演ジェイでしたから、あのパーカッション・パートをオリジネイター:アランが叩くのは、この日からなのです。そのシーンがまた大感動。壮大な大曲を静かに聴き入っていた観客たちも、この時ばかりは歓喜・感涙。本作でもどよめきと喝采が沸き上がり、オーチャードホールに感激が広がる。交代後も、万が一に備えて側らにジェイが控える中、見事に大曲をフィニッシュするアラン。その終演後には会場中からアランの名を讃え、歓喜にむせぶ大喝采と声援が贈られる。そんな様子が超クリア・サウンドで描かれているのです。“クリス最後のステージ”となった日本へ戻ってきたYES。その初日にして、アラン復帰の劇的な瞬間も東京最強サウンドで収めたライヴアルバムの大傑作です。単に素晴らしい演奏、美しい音楽と言うだけでなく、観客たちの沸き上がる喜びにまで包まれる喜びのひととき。 Live at Bunkamura Orchard Hall, Tokyo, Japan 21st November 2016 TRULY PERFECT SOUND(from Original Masters) Disc 1 (65:48) 1. Onward (Chris Squire tribute) 2. The Young Person's Guide to the Orchestra 3. Machine Messiah 4. White Car 5. Tempus Fugit 6. Steve Howe Introduction 7. I've Seen All Good People 8. Perpetual Change 9. And You and I10. Heart of the Sunrise Disc 2 (77:19) 1. The Revealing Science of God 2. Leaves of Green 3. Ritual 4. Member Introduction 5. Roundabout 6. Starship Trooper