日本公演に先立って行われた米国3公演からその中間日となる4月23日のフィラデルフィア公演を完全収録。この4月の米国3公演はドラムにマイク・マンジーニを迎えて行われた初の公演であるばかりでなく、チャド・ワッカーマンの離脱で編成を急遽組み直し、日本ファイナル公演に向けた最終布陣での演奏を実戦で初めて試した重要な公演です。「Nothing To Lose」がセットに無い事も特徴ですが、やはり一番の違いはドラムがマンジーニになった事でリズム面での変化と強化が幾つも散見される点でしょう。また面白いことに普段あまり目立たないギター・サウンドを間近で拾っているので、アレックスの彩り豊かな表現がよく把握出来る事も大きなトピックスとなっています。 会場が200~300人規模の" 食事が出来るカフェに併設したステージ "という事もあり、キーボード・ソロ(※日本公演と同じく「Ballooning Over Texas」をやっています)では食事をしているらしい周囲の音も入っており、場内の臨場感が滲み出ている収録音も面白い特徴です。ショウの流れは基本的に1stレグの欧州ツアーと変わりませんが、「Thirty Years」が流れ出した途端仰天される筈です。何しろ全ての楽音が非常に近く鮮明で、ベースとドラムがタフでファットな響きを至近距離で出し、ヴァイオリンは勿論のこと普段目立たないギターがしっかり主張しているのですから、アンサンブルの彩りが実に華やかに広がるのです。もちろんウエットンの歌声も近く実に明瞭です。「Carrying No Cross」では音の密度が非常に高く、歌唱とキーボードの音色だけで進むパートでも実に濃密な至近距離サウンドが耳を潤します。終曲手前でスネアにエコーを効かせる効果も既に含まれており(10分30秒~)、日本公演同様に印象的な色彩を放っています。「Alaska」の中盤以降の展開は日本2公演以上に強烈な疾走感と緊張感があり、全く別次元の演奏をしている事も注目でしょう。何故これほどのグルーヴを出せたのに日本2公演では適度な安全運転をしていたのかと疑念を抱いてしまうほどです。「Time To Kill」もそんなゴツゴツした疾走感が心地良いフックを効かせながら転がり、その上をヴァイオリンが歌い上げてゆく様子が至近距離の麗しいサウンドで飛び出してきます。「Rendezvous 6:02」は日本公演に先立って既にバンド・アンサンブル版として試されていますが、この時点でかなりの完成度を見せています。中盤のアンサンブル浮上シーンがマイルドで日本2公演の時ほど急激に浮上せず、後半部でクラッシュ・シンバルの効果付けを既にやっているのも注目でしょう。「In The Dead Of Night」もリズム面が非常に強化されており、前任のヴァージナル・ドナティやマルコ・ミネマンが叩いていた演奏とはまるで別物です。2012年にテリーがバンドに戻った時、ドラムが変わるだけでこんなに違うものかと誰もが感じた筈ですがそれと同じ驚きがここにも存在し、マンジーニが何故U.K.の最終編成にその名を連ねたのかが直感で分かる演奏と言えるでしょう。中間部で出てくるギターのアプローチも目を見張るものがあり、普段あまり注目されないアレックスの貢献振りも聴きどころです。「Caesar's Palace Blues」も冒頭から強烈な打音の押し込みがあり、リズムが活きている事による曲の躍動・鼓動が透明度の高い直球サウンドで伝わってきます。驚くほどに運動性が高く、ヴァイオリンに主導されながら終曲へ向かう流れも安全運転気味だった日本2公演とは全く違っており、後半の攻めて挑む演奏の鋭さはディスク2最大の聴きどころと言っても過言ではないでしょう。「The Only Thing She Needs」も演奏全体に漲る鮮烈なドライヴ感が極上サウンドで体を駆け抜けます。中盤からヴァイオリンとギターが交錯してお互いのリード旋律をキメてゆくシーンも鮮やかなサウンドで耳元を潤すので御注目下さい。 聴き終えて恐らく誰もが感じることは、「ひょっとして日本公演よりも充実しているのでは...?」という驚きでしょう。確かにマンジーニの実戦配備と調整を兼ねたギグではあった筈ですが、しかしそうであるだけに演奏にフレッシュで鮮烈な勢いがあるのもまた大きな事実です。 Live at World Cafe Live, Philadelphia, PA. USA 23rd April 2015 TRULY PERFECT SOUND Disc 1(60:18) 1. Thirty Years 2. Nevermore 3. Carrying No Cross 4. Alaska 5. Time To Kill 6. Night After Night 7. Keyboard Solo 8. Violin Solo Disc 2(50:37) 1. Drum Solo 2. Rendezvous 6:02 3. In The Dead Of Night 4. By The Light Of Day 5. Presto Vivace & Reprise 6. Forever Until Sunday Encore: 7. Caesar's Palace Blues 8. The Only Thing She Needs 9. Carrying No Cross (Last Verse) John Wetton - Bass, Vocals Eddie Jobson - Keyboards, Violin Alex Machacek – Guitar Mike Mangini - Drums, Percussion