78年4月から12月まで続いた第一期のU.K.ツアーも中盤から後半に差し掛かるアボンデール公演を収録した作品です。少しピッチが高めの分、音質は'A'ですが、あえて評価'B'としました。第一期U.K.は優秀なSB音源が多く、そのために悪質なコピー音源が乱発されている中で、オーディンエンス録音は新鮮かつSBでは分からなかった音像が見えてきます。例えばエディの細かなキーボードのフレーズ、ウェットンのベースが3人U.K.音源同様かなり歪んでいることが分かります。全体を通じてウェットンのボーカル音量のレベルが少し低いのは、恐らく当日のPA設定が要因だと思われます。1、2曲目は定番のセットリスト。「Time To Kill」でのエディのバイオリンソロは冒頭から会場を興奮へと誘うノリのいい仕上がりです。続く「The Only Thing She Needs」では最初の部分が少しテープのヨレか音がゆれます。この曲の後半部分では他ではあまりないウェットンのベースソロパートがあります。この作品の聴きどころです。ウェットンのベースソロからエンディング部分でのくねるようなギター、そしてテンポを上げていくビルのドラミングとの絡みは鳥肌物です。「Carrying No Cross」まで来ると、ピッチの高さがより顕著になります(テープのヨレを補うためにあえての処置なのでしょうか?よく聞いているとこのピッチでもワカメです)。この曲はイントロ・アウトロともキーボードとスネアのリズム・ユニゾンも決まっていて、中々の出来です。「Thirty Years」では中間部のアランのインプロ的ソロが何ともアバンギャルドなはまり方で、他の公演とは一味違うテイストをこの曲に与えていて、もう一つの聴きどころです(とは言っても派手さは全くありませんが)。その勢いは終曲「In The Dead Of Night」まで続き、ここでもアランのソロは特に異彩を放っていて、ビルの普段のジャズロック的アプローチとは違い、ロック色溢れるアグレッシブなドラミングと絡み、ライブは最高潮となります。アンコールではだいぶピッチのずれも戻り、納得感のある形で作品自体も終わります。 サウンドボード音源にはない、オーディンエンス録音のよさを再認識させてくれる作品です。 1.Alaska 2.Time To Kill 3.The Only Thing She Needs 4.Carrying No Cross 5.The Sahara Of Snow 6.Thirty Years 7.Presto Vivace 8.In The Dead Of Night 9.Caesar's Palace Blues John Wetton(b,vo),Eddie Jobson(vn,key),Allan Holdsworth(g),Bill Bruford(dr)