ジョン・ウェットンに捧げる「Heat Of The Moment」の初演を収めた極上ライヴセットが登場です。2017年1月31日に亡くなったウェットン。その報を受けたYESは、彼に哀悼の意を表して「Heat Of The Moment」を演奏していました。その初演となったのは「2017年2月8日」。豪華客船“BRILLIANCE OF THE SEAS”の船上コンサートのことでした。現在、海外ではコンサート付きのクルーズが流行しており、さまざまなアーティスト/バンドが参加しています。このショウは、そのYES編。“CRUISE TO THE EDGE”と称して米国フロリダ州タンパから、カリブ海の孤島コスメルまでのクルーズ中に行われたもので、プレグレファンには(アーチストにとっても!)、毎年の恒例のイベントと化しています、まずは、このクルーズのポジションをツアー日程の中で確認してみましょう。 ・2月3日:チェロキー ・2月7日:“CRUISE TO THE EDGE” ・2月7日:“CRUISE TO THE EDGE” 【本作】 ・2月11日:サンクトペテルブルク ・2月12日:ポンパノビーチ 『POMPANO BEACH 2017』 ・2月14日:アトランタ ・2月15日:ジャクソンヴィル ・2月17日:ビロクシ ・2月18日:シュリーブポート ・2月19日:ダラス ・2月20日:ミッドランド これが2月に実施された北米ツアーの全容。“CRUISE TO THE EDGE”では「2月7日・8日」の2公演がありましたが、本作は2日目にあたります。本作は、そんな「2月8日」のフル・オーディエンス録音をディスク1・2に、ダイジェストのオーディエンス映像をディスク3に配した3枚組です。まずは、メインとなるフルのオーディエンス・アルバム。これが極上を究める凄まじいライヴアルバムなのです。そのクオリティは「まるでサウンドボード」を超えて「これがサウンドボードじゃない!?」と驚く次元。極太にして極端なまでにクリアな楽音は恐ろしくダイレクトで、距離感がまったくない。喝采の生々しさにオーディエンスらしさが透けるものの、それも精緻にミックスされたオフィシャル盤のようなバランス。もちろん、楽音自体に文句の付けようがなく、すべてにおいて極めて美しく均整の取れた超・美録音なのです。そのクオリティで描かれるショウは、海外公演でお馴染みの「ドラマの完全再現+海洋地形学の部分再現+大代表作」構成。ただし、クルーズという特殊な環境からか、「Heat Of The Moment」初挑戦のためか、2つの再現パートの間に有名曲を挟まず、大代表曲はアンコールに固めて演奏されます。そして、そのムードは演奏にも現れており、いつも以上にキチッと丁寧な演奏ぶり。サウンドもさることながら、パフォーマンス自体からも“美”が際立つライヴアルバムなのです。そんな雰囲気が破られるのが、大ラスに公開された「Heat Of The Moment」。スティーヴ・ハウによる「Dedicated to a friend, John Wetton!」の宣言に導かれて始まる名曲に観客は驚喜するのです。高価なクルーズ公演に参加しているだけあって、観客は骨の髄までプログレッシヴ・ロックを愛している連中だらけ。恐らく、全員が1週間前の訃報を承知していると思われますが、まさか、まさかYESがAISAの大代表曲を演奏するとは……そんな驚きと喜びがリアルに記録されている。先日リリースされた『POMPANO BEACH 2017』ではちょっと怪しいアンサンブルでしたが、本作は初演の緊張感が良い方向に転んだのか、非常にタイトで丁寧な仕上がりを聴かせてくれます。本作は、超・極上のライヴアルバムに加え、その衝撃の瞬間を収めた映像も収録しました。ディスク3のDVDです。このディスクには3種の映像が収められており、いずれも部分収録ながら極上クオリティです。まず最初に登場するメイン・ショットはメンバー紹介から「Roundabout」「Starship Trooper」「Heat Of The Moment」を収録。アルバム再現パート以外の全曲です。ステージ左側(ハウ側)1階席から撮影されており、ハウを中心に捉えたバツグンの接写が美味しい。もちろん、最新デジタル機材による超美麗な画質であり、安定感も絶品。ズームではハウの指使いまで迫り、まるでプロショットの1アングルかのような映像美です。他2つのショットは、記念すべき「Heat Of The Moment」だけを収めたもの。ステージ右寄り(ビリー・シャーウッド寄り)2階席からの見下ろしショットと、ステージ正面後方から全景を収めたショットです。安定感の面ではメインショットに譲るものの、どちらも最新デジタルの超画質です。2階席ショットは各人の表情まで分かるズームを多用。ウェットンの名をコールしながら虚空を指さすハウのカッコ良さ、アラン・ホワイトの横でカウベルを叩くジェイ・シェレンの姿まではっきりと目撃できます(ちなみに、ASIAとは縁もゆかりもないアランがこの曲を叩いたのは、この日だけ。その後はシェレンが担当しました)。最後に控える3つめの正面ショットは、正対しているからこそステージ背後のスクリーンもハッキリ見える。そこには「John Wetton 12th June 1949 31st January 2017」の文字が……。 極上究めるクオリティで初演「Heat Of The Moment」を収めた大決定盤です。その記念碑価値は揺るぎようもありませんが、もう1つ付け加えるなら船上コンサートの空気感もポイント。日本では難しい企画であり、そのムードを味わえるのは非常に貴重です。やや小さめではあるものの、しっかりとしたステージや2階席まである会場の広さ。そして、北米とは思えないほどに整然と聴き入る観客の雰囲気や親密感・密室感。そのいずれもが独特であり、思わず「この場に参加してみたい」と思わせる上品な空気がモニターとスピーカーから流れ出るのです。貴重さ・クオリティ・体験感……そのすべてが特上の3枚組。 Live at Pacifica Theater, Royal Caribbean Brilliance of the Seas En route from Tampa, FL. USA to Cozumel, Mexico 8th February 2017 ULTIMATE SOUND Disc 1(65:35) 1. The Young Person's Guide to the Orchestra 2. Machine Messiah 3. White Car 4. Does It Really Happen? 5. Into the Lens 6. Run Through the Light 7. Tempus Fugit 8. MC Intro. 9. The Revealing Science of God (Dance of the Dawn) Disc 2(57:52) 1. Leaves of Green 2. Ritual (Nous Sommes du Soleil) 3. Roundabout 4. Starship Trooper 5. Heat of the Moment DVD(36:26) 1. Member Introduction 2. Roundabout 3. Starship Trooper 4. Heat of the Moment 5. Heat of the Moment #2 6. Heat of the Moment #3 COLOUR NTSC Approx.36min.