伝説の初来日公演を収めたの名録音が復活です。本作が録音されたのは「1973年3月10日:神田共立講堂(共立女子学園講堂)」。初来日3日目のことでした。まずは、日程で確認してみましょう。 ・3月8日:東京厚生年金会館 ・3月9日:渋谷公会堂 ・3月10日:神田共立講堂 【本作】 ・3月11日:名古屋市公会堂 ・3月12日:大阪厚生年金会館 ・3月14日:京都会館 以上が初来日の全容。全6公演の半分が東京公演だったわけですが、本作はその最終日でもありました。そんな本作は、CD『IN JAPAN』や『CLOSE TO THE EAST』の一部としても大人気の名録音。人気の理由は、なんと言ってもクオリティ。録音家自身から譲られたオリジナル・カセットをダイレクトに使用しており、その鮮度は昨日録ったかのように新鮮。「まるでサウンドボード」と呼ぶようなタイプではありませんが、ダビングやマスター劣化がまるでなく、43年前の大気がスピーカーからそっくり吹き出してくる。もちろん、録音自体も素晴らしい。やや距離はあるものの、その空気感が透き通っており、1音1音クリアな楽音が鮮やかに踊り、空間に降り注ぐのです。さらに現場の観客たちも美しいサウンドに一役買っている。現在でもプログレ系の来日公演は目を凝らし、耳を澄ませる観客たちが集っていますが、本作では1曲1曲を終える度に沸き上がる大歓声も若々しく、割れんばかりの熱狂は演奏中の静寂にさえ熱を感じさせる集中力なのです。実のところ、この録音は無音部でうっすらとヒスノイズが入っているのですが、これさえもが固唾を飲む空気感に溢れている。もちろん、リマスターで消すことも可能でしたが、貴重な初来日のフレッシュな匂い、固唾を飲む観客たちの息づかいまでも伝えるため、あえてマスターそのままにいたしました。YESにとっては、そんな日本独特のムードも初体験だったわけですが、本作が録音されたのは3日目。まだ、戸惑いがありながらも「静寂ではあっても熱い」ことを知り、少しずつ慣れ始めた刹那が描かれている。特に面白いのは「Heart Of The Sunrise」。キメが崩れてリズムも狂い、さらにはジョンが歌詞を忘れてしまう大失態。初めてのアジアでも歓待された安堵感から油断が出たのかも知れませんが、そのムードもまた歴史のドキュメント。当時は『YESSONGS』のリリース直前であり、会場に詰まった空気は現代のように演奏できて当たり前ではなく、「こんな緻密な音楽が生で演奏できるのか」というものであり、複雑な曲想を目の前で次々と再現するバンドに圧倒されている。そんな中での一時の混乱は、ミスなのかライヴ用のアレンジなのかさえリアルタイムで判断できない……そんな未知の中にいる感覚がリアルなのです。その反対に微笑ましいのがスティーヴ・ハウのアコースティック・ソロの前に披露された「Sakura Sakura」。ジョン・アンダーソンが「古い日本のフォーク・ソングにトライします」と言いだし、たどたどしい日本語で「さくら♪さくら♪」と歌い出すのです。彼が日本語で歌うのは、この日が初めて。もちろん、観客は驚きながらも大喜び。まさに歴史的な1シーンに立ち会うことができるのです。この伝説の初来日から43年、今年11月には10度目の来日(ABWH含む)を果たす彼ら。長きにわたって蜜月を続けてきたYESと日本。その3日目の現場にたゆたっていた“出会いの空気”をたっぷりと吸い込んできたオリジナル・マスターです。週末の部屋を“1973年の匂い”で包んでくれる大傑作、あなたのお手元へお届けいたします。 Live at Kanda Kyoritsu Koudou, Tokyo, Japan 10th March 1973 TRULY AMAZING SOUND(from Original Masters) Disc 1(48:31) 1. Siberian Khatru 2. I've Seen All Good People 3. Sakura Sakura 4. Mood For A Day 5. Clap 6. Heart Of The Sunrise 7. And You And I Disc 2(66:31) 1. Close To The Edge 2. Rick Wakeman Solo 3. Roundabout 4. Yours Is No Disgrace 5. Starship Trooper Jon Anderson - Vocals Steve Howe - Guitar & Vocal Chris Squire - Bass & Vocal Rick Wakeman - Keyboards Alan White – Drums