“Moscow Music Peace Festival”は、世界的に注目を集めた画期的フェスだっただけに、当時からテレビ放送も世界中で行われました。『MOSCOW MUSIC PEACE FESTIVAL』は、現存する最高峰クオリティの日本盤レーザーディスクから復刻しましたが、それ以外にもオフィシャル未収録の曲も放送されていた。本作は、そんな放送を約1時間分まとめたプロショット集なのです。そのクオリティは、目も覚めるような見事なプロショット。元々が80年代の放送ですので、さすがに頂点を極めた2DVDには及びませんが、マスター鮮度は極めて素晴らしく、線ノイズどころかビデオの宿命とも言うべき歪みさえない。間違いなく過去最高クオリティです。そして、本編の解説でも触れた通り、そのパフォーマンスは名演中の名演。HR/HM全盛期に名を成した名バンド達がズラリと並び、それぞれが頂点を極めるような時期。その上、世界史が蠢く世紀の大イベントに立ち会っているテンションが猛烈に爆発するのですから、悪かろうはずがない。2DVDでも4時間にわたって味わえたわけですが、それがさらに1時間プラスされるわけです(MCにはちゃんと日本語字幕もあります)。特に嬉しいのは、MOTLEY CRUE。オリジナルの公式映像は、各バンドともおおよそ5・6曲ずつの収録なのですが、MOTLEY CRUEだけは3曲だったのです(なんとGORKY PARKより少ない!)。当時のMOTLEYはプロデューサーのドク・マギー傘下にいたのですが、このイベントの出演順を巡って対立。イベント直後にドクと決別しています。それが原因かは分かりませんが、あまりにも冷遇された扱いだっただけに、本作の4曲(+ギターソロ)が加わることでやっと他バンドとのバランスが取れるのです。もうひとつ、豪華ジャムセッションの「Give Peace A Chance」も必見です。曲に入る前、GORKY PARKのニコライ・ノスコフがマイクを握り、ロシア語でMCを執るのですが、これが非常に感動的。内容はシンプルで「ロックンロールの祭典が俺たちのモスクワにやってきた。これは世界平和のフェスティバルだ。一緒に歌ってくれ、ロックンロール!」程度なのですが、この誇らしげな顔、ロシア人に母語で語りかける姿をご覧いただきたい。ロックと言えば、親世代の無理解と戦うイメージもありますが、この表情、言葉に込められた想いは、それどころの話ではない。本編でも語られていましたが、ほんの数年前まで共産圏では「ロック=西側の堕落した文化」に過ぎず、取り締まりの対象だった。それでもロックが大好きで、世間に隠れ、闇市でテープを買い、当局の目を逃れるようにスタジオに籠もって練習していたであろうバンド野郎。その彼が12万の同胞の前に立ち、誇らしくロックを語る。当たり前の「一緒に歌ってくれ」という言葉が、とんでもなく重い。同じロックを愛する私たちの心を鷲づかみ、激しく揺さぶってくる姿なのです。OZZY OSBOURNEとMOTLEY CRUEには、2日目「8月13日」の完全版映像が流出している(リリース版と放送版は両日のミックス)ので、現存するプロショットのすべてというわけではありませんが、オフィシャル映像を補完するには十二分の極上テレビ放送映像集です。歴史的な一大イベントを心ゆくまで楽しむ傑作プロショット・セット。どうぞ、存分にお楽しみください。 Live at Lenin Stadium, Moscow, Russia 12th & 13th August 1989 PRO-SHOT (59:18) GORKY PARK 1. Action CINDERELLA 2. Somebody Save Me MOTLEY CRUE 3. Intro 4. Shout At The Devil 5. Looks That Kill 6. Guitar Solo 7. Smokin' In The Boys Room 8. Jailhouse Rock OZZY OSBOURNE 9. Crazy Train SCORPIONS 10. Bad Boys Running Wild 11. Hey Uhnem! 12. Rock You Like A Hurricane BON JOVI 13. Bad Medicine JAM 14. Give Peace A Chance PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.59min.