ほぼ唯一であるソロのフル公演“ONE TO ONE”を収めたオフィシャル映像が史上最高峰クオリティで復刻です。このコンサートは、障害児施設の援助を目的とした“ONE TO ONE運動”の一環として実施されたもの。ソロで本格的なツアーを行わなかったジョンにとっては1966年のビートルズのライヴ活動停止以来、唯一のフル・コンサートでした。その模様は公式ライヴアルバムや2種類のビデオ『LIVE IN NEW YORK CITY』『THE ONE TO ONE CONCERT』としてもリリースされ、長年にわたって親しまれてきました。しかし、ライヴアルバムはCD化されたものの、映像はとうの昔に廃盤のまま。現在に至るまでDVD化の目処も立っていません。それだけにアンダーグラウンドで復刻DVDも数々作られてきましたが、本作はその最高峰クオリティ盤となるもの。ディスク1に1985年リリース『LIVE IN NEW YORK CITY』、ディスク2に1992年リリースの『THE ONE TO ONE CONCERT』を配した2枚組です。本作は、大元のソースから幾多の既発群とは違っています。そのソースとは“日本盤レーザーディスク”です。レーザーディスクは走査線の規格からしてVHSやベータよりも優れているわけですが、特に日本盤は世界中のコレクターから“頂点”と認識されている。当時から最新メディアに敏感だった日本は、レーザーディスクの先進国であり、無数の映像作品がリリース。そのラインナップも品質も他国を圧倒しているのです。さらに、レーザーディスクは保存性も格別。磁気テープであるVHS/ベータはどうしても激しく経年劣化してしまいますが、レーザーディスクは構造上、劣化は最小限で済む。これまで、さまざまな映像記録がDVD化されていますが、中にはオリジナル・マスターが劣化してしまい、市販品レーザーディスクの方がハイクオリティなケースも珍しくないのです。そんな“日本盤レーザーディスク”ですが、本作はさらにコアなコレクターが所有していたミント状態の極上盤を使用。通常は海外の提携専門メーカーでデジタル化するところなのですが、本作はちょっと違う。このマニアは再生機に関してもコレクターでして、自前のハイエンド機材でプロ仕様とまったく変わらないデジタル化をしてみせたのです。そのクオリティたるや、異常の次元。もちろん、1972年の収録ではあるのですが、その瑞々しい発色とノイズもヨレも一切存在しない画面は、大元マスターが持っていたであろう映像美を映しだしてくれるのです。もちろん、音声も極上。当時からライヴアルバムとはミックスが違うと話題になったものですが、そのサウンドはハッキリ言って本作の方が上。今のCDの痩せた音とはまるで違う豊かな鳴り、コシのある低音の聴き応えは比較になりません。そんな最高峰クオリティを誇る本作ですが、“日本盤レーザーディスク”の旨みは、もう1つある。それは各所に配された日本語字幕です。特に素晴らしいのがディスク1の『LIVE IN NEW YORK CITY』。ジョンやヨーコが曲間に話すMCに字幕が付くのです。これが最高。ヨーコが「みんな、今こそ私たちが変わる時なのよ。今年だけしかない。さぁ目をさまして!」と話すやジョンが間髪入れず「レゲエだ」と答えるタイミングのカッコ良さ、「リンゴーだって? あれは昔の仲間だぜ」「ぼくがストーンズを辞めた後のアルバムの曲だ」といったジョークもビビッドに理解できるのです。 特に強烈なのは、ラストの「Give Peace A Chance」。「人民革命」と書かれたヘルメットを被ったヨーコが「ここで声明を読みます」と切り出し、有名な政治家の演説を語り出す。ちょっと書き出してみましょう。『わが国では街はどこも混乱をきたし、大学には反逆者たる学生たちがあふれ、騒乱状態にある。共産主義者はわが国の滅亡をもくろんでいる。ロシアはその力を持って我々を脅かしているのだ。自由主義は今、危機に瀕している。まさに危険なのだ。国の内外に於いて、法と秩序が必要とされている。それなくしてわが国の存続はあり得ない。我が国は街のあちこちで混乱が起き、大学では学生たちが反乱を起こしている』アドルフ・ヒトラー(1932年)思いっきりネタバレしてしまいましたが、これがビートに乗って語られる“光景”だからこそリアル。ステージを見守りながら何やら叫ぶ観客の表情、はしゃぐジョンの姿が相まってこその時代感。そして、ヒトラーの演説がそのまま「ぼくらが言いたいのは…平和を我らにということだ。平和を我らに!」の歌詞に繋がっていく……。ライヴアルバムでは聴けないヨーコの「Sisters, O Sisters」「Born In A Prison」が観られるだけでも嬉しいですが、そのメッセージも映像とタイムラグなしに能に入り込んでくる。そんな光景が史上最高峰の美しさで描かれるのです。 一方のディスク2は1992年になって登場した『THE ONE TO ONE CONCERT』です。こちらは6曲分のダイジェストなのですが、代わりに同日に出演したスティーヴィ・ワンダーの「Superstition」、ロバータ・フラックの「Reverend Lee」「Somewhere」を収録しています。こちらも“日本語盤レーザーディスク”を使用しており、クオリティは最高峰。同じように日本語字幕も付いており、ロバータ・フラックの語りが少しずつ歌になっていくシーンもすんなり理解できます。ただ、ジョン&ヨーコは演奏中心に編集されており、MCはほとんどない。その代わりにポイントなのがサウンドでして、『LIVE IN NEW YORK CITY』とは明らかにミックスが異なっている。特にヨーコのヴォーカルはかなり処理されており、生々しい『LIVE IN NEW YORK CITY』よりも作品として作り込んでいることがうかがえるのです。もうすぐジョンが亡くなってから36回目の「12月8日」がやってきます。そんな師走のひととき、彼の唯一のソロ・コンサート“ONE TO ONE”を史上最高峰クオリティで目撃できる本作でお過ごし頂ければ幸いです。 Live at Madison Square Garden, New York, NY. USA 30th August 1972 Live In New York City: Japanese Laser Disc Edition 1. Introduction 2. Power To The People / New York City 3. It's So Hard 4. Woman Is The Nigger Of The World 5. Sisters, O Sisters 6. Well Well Well 7. Instant Karma! 8. Mother 9. Born In A Prison 10. Come Together 11. Imagine 12. Cold Turkey 13. Hound Dog 14. Give Peace A Chance One To One Concert: Japanese Laser Disc Edition 1. Introduction 2. Superstition (Stevie Wonder) 3. Reverend Lee (Roberta Flack) 4. Somewhere (Roberta Flack) 5. Come Together 6. Instant Karma 7. Sisters, O Sisters 8. Cold Turkey 9. Hound Dog 10. Give Peace A Chance 11. Imagine (End Credits) Plastic Ono Elephant's Memory Band John Lennon - vocals, rhythm guitar, keyboards Yoko Ono – keyboards Jim Keltner - drums Wayne 'Tex' Gabriel - lead guitar Gary Van Scyoc - bass guitar John Ward - bass guitar Stan Bronstein - saxophone Adam Ippolito – keyboards Richard Frank Jr. - drums PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.95min.