突然の「引退宣言」や豪華共演でも有名な大定番プロショットがリリース決定です。そんな伝説ともなっているショウが行われたのは「1977年11月3日ロンドン公演」。“BLUE MOVES TOUR”の最終日でもある“ウェンブリー・エンパイア・プール(現:ウェンブリー・アリーナ)”でのコンサートでした。このショウはマルチカメラで収録され、長年の大定番として知られています。1979年には日本でも某公共放送局で放送されましたが、その際には放送枠に沿った抜粋版。本作はそんな日本放送とは違う約2時間の全長版です。そのクオリティは絶品。40年前のテレビ放送だけに画質やカメラワークにヴィンテージ感覚も漂いますが、マスター鮮度にはまるでない。さすがに「白線ノイズ1本もない」とは言えないものの、それは“ゼロではない”というだけ。ダビング痕も見当たらず、スポットライトに照らされて輝くブロンドは1本1本までクッキリ。鮮やかな発色は当時のそのもので、ほぼほぼ全編ノイズなしの艶やかな画面で浸りきれる。もちろん、音声も極上のサウンドボード。ショウの中盤でややヒスノイズが入るパートもありますが、それも数曲で改善し、後半になるほどに美しいサウンドなっていくのです。そんなクオリティのマルチカメラ・プロショットで描かれるのは、まさにヒストリカルなショウ。セットリストには70年代の大ヒット曲がズラリと並び、それを歌うエルトンの歌声も30歳7ヶ月の若々しさ。とてもこの後、約1年間に渡って音楽活動を止めてしまう人のショウとは思えない素晴らしいコンサートなのです。しかし、本作はその「引退宣言」でこそ、名を残すショウでもある。その歴史的な瞬間が訪れるのは「Bennie And The Jets」を歌い終わった後。次曲を待つ観客を横目に小さく語り出すエルトン。「長い間ツアーしていなかったし、本当はロードに戻るかすごく迷ったんだ。でも、決断したんだ。今夜は、私の最後のショーだよ(I haven’t been touring for a long time and it’s been a painful decision whether to go back on the road…. But I’ve made a decision and this is the last show I’m gonna do.)」この言葉の真意を測りかねたのか、それとも単に聴き取れなかったのか、観客はどことなく妙な喝采を返す。そんなムードの中で「Sorry Seems To Be The Hardest Word」が始まる……。そんな「引退宣言」と並んで本作最大の見どころは、豪華ゲストとの共演。本編セットを終え、バンドメンバーを紹介して始まったアンコールでは2人のゲスト、キキ・ディーとスティーヴィ・ワンダーとのデュエットが実現しています。まず登場するのはキキ。曲はもちろん、「Don't Go Breaking My Heart(恋のデュエット)」。前年に初の全英シングルチャート1位を獲得したヒット・ソングを嬉しそうにデュエット。最後には寄り添い、キスするシーンもあります。そこに登場するのがスティーヴィ・ワンダー。エルトンとキキにエスコトーされてピアノに座る。エルトンが軽快に「Bite Your Lip (Get Up And Dance!)」を歌い始めると、スティーヴィは気持ち良さそうにタンバリンを叩いていますが、曲がブレイクするとステーヴィの出番。エルトンの「Get Up, get up & dance♪」に、あのソウルフルな歌声でスキャットに絡んでいく。そして、遂にはエルトンもピアノを譲り、最後には連弾! この共演だけでも見どころですが、この時のエルトンは引退宣言をした直後。「これが最後のショウ」と言った、その最後の曲でスティーヴィと並ぶ……。この瞬間の心境を想像するだけで何とも深い1曲なのです。もちろん、次作『A SINGLE MAN』の発表後には、何事もなかったように大々的なツアーを行ったエルトン。しかし、この当時の想いがズームもたっぷりのプロショットで描かれる1枚です。若々しい歌声で綴られる名曲群に浸るも良し、豪華共演にときめくも良し、当時のエルトンに想いを馳せるも良し。幾重にも楽しめる大定番の歴史的プロショット。 Live at Wembley Empire Pool, London, UK 3rd November 1977 PRO-SHOT 1. Better Off Dead 2. Daniel 3. Roy Rogers 4. The Goaldigger's Song 5. Where To Now St. Peter? 6. Shine On Through 7. Tonight 8. I Heard It Through The Grapevine 9. Island Girl 10. Candle In The Wind 11. One Horse Town 12. Bennie And The Jets 13. Sorry Seems To Be The Hardest Word 14. Philadelphia Freedom 15. Funeral For A Friend/Love Lies Bleeding 16. Rocket Man 17. (Gotta Get A) Meal Ticket 18. Your Song 19. Band Introduction 20. Don't Go Breaking My Heart 21. Bite Your Lip (Get Up And Dance!) PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx. 119min.