ジョン・レノンの生誕50年、そして没後10年。そんな節目となる“1990年”に放送されたテレビ特集がリリース決定です。本作に収められているのは「1990年12月10日」に放送された2時間の日本番組。“こだわりTV PRE★STAGE”のジョン・レノン追悼特集を収めた1枚です。1988年から丸4年間にわたり、某民放の深夜枠で放送されていた番組で、この回はジョンの10回忌の2日後に放送されたものです。そんな本作最大のポイントは、ジョンの死去から10年という“時代の空気感”。しかし、それを伝えるクオリティも素晴らしい。当店では、国内のコアな録画マニアが記録したテレビ番組をいくつもご紹介してきましたが、本作もそんなコレクションの1つ。「保存」に対する情熱は尋常ではありません。放送当時にハイエンド機材・受信環境にこだわり抜いているだけでなく、そのクオリティをキープし続けているのが凄い。お預かりしたマスター・カセットはピカピカで当時そのものですし、テープ状態もヨレ・歪みがまったくない。恐らく一度も再生しなかったのでしょうが、それだけでは説明が付かない。温度・湿度に至るまで、徹底的に管理していたに違いない……そんな映像美なのです。そのクオリティで蘇る“1990年のリアル”が素晴らしい。番組は多数のゲストがジョンやビートルズへの想いを語りつつ、ジョンゆかりのクリップやライヴ映像を流していく。映像自体はお馴染みのものが多いものの、ゲストはそうそうたる顔ぶれ。大物翻訳家、フォークシーン/ニューミュージックの大御所、当時「イカ天」で一世を風靡していた作曲家。ジョンが日本語を学んでいた際のイラスト集や家族と一緒に過ごしたカメラマンの証言も紹介され、ジョンの人となりにも迫っていく。当時の地上波番組というと、トンチンカンなアイドルや知名度以外に能のないタレントの知ったかぶりが定番でしたが、この番組は違う。ビートルズやジョンに人生を変えられた人たちの思いが生の声が綴られるのです。しかも、その言葉が絶妙に“1990年”。無闇やたらと悲しまないところにも“10年”が感じられますが、それ以上に世情も透ける。翻訳家は平和を愛したジョンに触れて「クウェートとアメリカの問題が表面化してくると……」と憂い、海洋ほ乳類な女性フォークシンガーも「今年ほど私にとって平和って何だろうな、と深く考えさせられた年はなかった」と語る。この放送は湾岸戦争勃発の1ヶ月前であり、イラクのクウェート侵攻に対抗する多国籍軍が結成。攻撃開始は今日か、明日か……といった緊迫した時節だったのです。そんな空気がチラッと垣間見えつつ、本作を包み込んでいるのはバブルの薫りでもある。冒頭からワンレン・ボディコンに身を固めた女性がポーズを決め、その耳にはちぎれそうなほど大きなイヤリングが輝く。さらに強烈なのがジョン・レノン特集の合間に挟まるレギュラー・コーナー。神業のような車庫入れテクニック(?)や山を丸ごと飾り立てたクリスマス・イルミネーション(??)、寒天の付きだし作業(!?!)を紹介していく。そのどーでもいいくだらなさ、バカみたいにデカいスケール………メインの“ジョン・レノン追悼”との躁鬱的なギャップ。これが猛烈に“1990年”なのです。そんな番組のスキマに挟まるCM群も凄い。今では考えられないタバコCMが堂々と流され、日本語ワープロやトランシーバー、ワイヤレス・リモコンが売りのウォークマン、50インチのプロジェクションTV(内蔵プロジェクターで色の薄い映像を映すアレです)といった最新機種が並ぶ。もちろん、タレントも当時感全開で、“スケバンな刑事”から足を洗った初代さんがメガネを宣伝し、101回プロポーズされたトレンディ女優さんがステレオ・パスポートサイズのカメラを構え、瞳に1億円の保険金をかけた“学園祭の女王”さんが「三都物語が始まる……」とつぶやく。もちろん、緑のタヌキさんが最近言い出した「東京・大阪・名古屋」ではなく、JR西日本のオリジナルの「京都・大阪・神戸」の方です。やや脱線が過ぎましたが、本作の要はそんな時代感の中で鳴るジョンの音楽。これが“今”と強烈にシンクロするのです。ふと我に返ってみれば、「国難」と言われるほどキナ臭く、闇が迫っていると分かっていても肌感覚で感じられないもどかしさ。その中で流れるジョンのメッセージ……まるで“今の私たち”にジョンが語りかけてくるようです。ジョンが世界から去って37年。しかし、彼の遺した音楽、メッセージは今もなおリアル。それを教えてくれるテレビ番組の傑作です。濃厚な懐かしさを発散しながら、“今”だからこそ心に突き刺さる1枚。 Broadcast Date: 10th December 1990 1. CM 2. Introduction 3. Studio #1 4. Stand By Me 5. Studio #2 6. CM 7. Slippin' and Slidin' 8. Studio #3 9. Come Together 10. Studio #4 11. CM 12. Studio #5 13. CM 14. Studio #6 15. CM 16. Imagine 17. Birthday 18. Studio #7 19. CM 20. Studio #8 11. While My Guitar Gently Weeps 22. It Don't Come Easy 23. Give Peace A Chance 24. CM 25. All You Need Is Love 26. You're Going To Lose That Girl 27. The Fool On The Hill 28. CM 29. Studio #9 30. CM 31. Studio #10 32. CM 33. Oh My Love 34. Studio #11 35. CM 36. Studio #12 37. Let It Be 38. Jealous Guy 39. Studio #13 40. CM 41. Bangladesh 42. Across The Universe 43. Studio #14 44. Imagine 45. Studio #15 46. CM 47. Studio #16 PRO-SHOT COLOUR NTSC Approx.123min.